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【奈良のたからもの】自由に生きる文人への憧憬〜聴松図巻(中国・清時代)絹本墨画淡彩 大和文華館蔵 (2/2ページ)
「文人」とは古く『詩経』大雅にも見える言葉で、詩文に親しみ書画を楽しむ人々を指す。韓国や日本にも広がり、現代まで継承される人物像の理想の一つとなった。文人が重視された背景の一つには科挙と呼ばれる官僚の登用試験がある。試験の出来如何によって官吏を登用する一見合理的な仕組みは、反面で一生涯続く試験への嫌悪と、社会の「文」への偏重を生み出していた。そのような中にあって、人々は「自由」を希求していく。何事にもとらわれず自由に生きる文人の精神こそは、中国人が長らく追求してきた理想、ヒューマニティそのものだったのである。
ここで描かれている人物は官僚としての自己の姿ではない。後面に流れ落ちる滝から静かに風が吹き、それは松の枝を揺らしている。この松籟(しょうらい)に耳を澄ませているのが自己であり、これこそが自身が考えた最も自分らしい自分の姿だったに違いない。
この絵は当代一流の山水画家、王●(=羽の旧字体の下に軍)(おうき)(1632〜1717年)が山水を担当し、その弟子、楊晋(1644〜1728年)が人物を描いたもの。清末の文人官僚・翁同●(=部首のヤクの右にノギ)(おうとうわ)(1830〜1904年)による跋(ばつ)がつく。近代中国、東北の貴公子・張学良(1901〜2001年)の収蔵も経た名品の一つである。今、大和文華館は三春の瀧桜(たきざくら)をはじめ木蓮、雪柳など早春の花が盛りを迎えている。展観とともに御清賞賜れば幸いである。(大和文華館学芸部部員、塚本麿充)
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