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【逸品の美学】「世界最速のサイコロ完全版」 最もフェアな四角錐
転がるスピードが特別速いわけではない。「世界最速のサイコロ完全版」というネーミングは、製造元の入曽(いりそ)精密(埼玉県入間市)がF1のエンジン部品も手がけていることに由来する。
このサイコロは、1〜6の目の出方を限りなく均等に近づけてあるのだという。頼みは運だけ。そんな“最もフェアなサイコロ”なのだ。
斎藤清和社長自らが解説してくれる。立方体は、各面を底に6つの四角錐(しかくすい)に分割できる。これらをすべて同じ重さにそろえれば、重心のぶれがなくなり、目の出方は均等になる。ところが実際は、材質や目の数や彫り方などによって重さはバラバラなのだという。
「彫りが少なくて重い『2』の目が最も下になりやすいから、『5』の目が出る確率が高いんです。サイコロは古代エジプト時代にもあったというけれど、昔のものはさぞ偏っていただろうなぁ〜と思いますよ」
不純物が混入しないよう、チタン100%の素材を使った。一辺は12ミリ。目は深さ2〜4マイクロメートル(1マイクロメートルは1ミリの1000分の1)の透かし彫り。2ミクロンの幅で深さを調整して、各面の重さを99・99999999%一致させたという。
見た目も美しい逸品を転がしていると、斎藤社長が一辺0・3ミリという自信作を持ち出してきた。「蚊の目と同じくらいです」。ケースの外に出したが最後、すぐ見つからなくなるだろう。それにしても、なぜまたこんなサイコロを?
「シンプルなものほど技術の差が表れるし、奥が深い。簡単なものをしっかり作れるのが本物ということですよ」。職人のプライドがのぞいた。(海老沢類)
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