ニュース: 文化 RSS feed
【人、瞬間(ひととき)】あの車 工業デザイナー・奥山清行さん(49)(上) (1/2ページ)
■15分で描きあげた名車
「初めてフェラーリをデザインした日本人」
しばしば、そう呼ばれる。イタリアのカロッツェリア(デザイン工房)「ピニンファリーナ」でデザインディレクターにまでのぼりつめ、1995(平成7)年から、フェラーリ7台、マセラティ2台など数々の名車を手がけた。
その1台、スーパーカー「エンツォ・フェラーリ」は、フェラーリ創業55周年を記念したモデルで、創業者の名を冠した特別な車。ちなみにお値段は発売当時で約7500万円だった。奥山は、たった15分で、その超高級車のデザインを描いた。98年のことだ。
◆◇◆
「今、この人を帰したら、二度とクライアントとして戻ってこない。サンドイッチを出すから、その間に描いてこい」
トリノ郊外にあるピニンファリーナの開発センター。肌寒い秋の日だったが、39歳のデザイナー、奥山の額には季節外れの汗がにじんでいた。
それまで2年がかりでデザインを練り上げた「エンツォ」の試作車を前に、フェラーリ首脳陣が苦り切った顔を見せている。
スーパーカーのデザインとしては、理にかなってはいたはずだが、斬新さに欠けたかもしれない…。奥山のチームのデザインに「NO」を突きつけ、フェラーリの会長が席を立つ。プレゼンは失敗した。とっさに上司が奥山に耳打ちしたのが“サンドイッチ作戦”だった。
「頭は真っ白。けれど、いつかこんな車を作りたい、と考えてきたアイデアがさっと頭に浮かんだ」
机に駆け戻るとペンを執り、こちらに、その次はこちらに。せわしなく手を動かしながら、温めてきた構想を白い紙にぶつけた。車の絵にさっと赤をのせ、車輪を描き終えると、自家用ヘリに乗り込もうとするフェラーリの会長の背中を追う。息も切れ切れに、「できました」とデザイン画を差し出した。
ひと目見て、「なんだ、君たちできるんじゃないか」。会長のゴーサインを得て、名車「エンツォ」のデザインが決まった。
「不可能を成し遂げ、常識を破るため常に備えるのが僕らデザイナーの仕事」
常識破りの15分は、まさに奥山の真骨頂だった。
このニュースの写真
関連ニュース
- 【人、瞬間(ひととき)】あの事件 作家・楊逸さん(44)(下)

- 【人、瞬間(ひととき)】あの作品 作家・楊逸さん(44)(中)

- 【人、瞬間(ひととき)】あの夕日 作家・楊逸さん(44)(上)

- 【人、瞬間(ひととき)】あの役 歌舞伎俳優・尾上菊之助さん(31)(下)
- 【人、瞬間(ひととき)】あの島 歌舞伎俳優・尾上菊之助さん(31)(中)
- 【人、瞬間(ひととき)】あの人 歌舞伎役者・尾上菊之助さん(31)(上)
- 【人、瞬間(ひととき)】あのステージ TAKUROさん(37)(下)

- 【人、瞬間(ひととき)】あの場所 TAKUROさん(37)(中)
- 【人、瞬間(ひととき)】あのテープ TAKUROさん(37)(上)

- 【人、瞬間(ひととき)】あの魚 女優・浅田美代子さん(52)(下)


