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【人、瞬間(ひととき)】あの車 工業デザイナー・奥山清行さん(49)(上) (1/2ページ)

2008.11.18 08:17
このニュースのトピックス美術・芸術
奥山清行さん=21日、東京・表参道(緑川真実撮影)奥山清行さん=21日、東京・表参道(緑川真実撮影)

 ■15分で描きあげた名車

 「初めてフェラーリをデザインした日本人」

 しばしば、そう呼ばれる。イタリアのカロッツェリア(デザイン工房)「ピニンファリーナ」でデザインディレクターにまでのぼりつめ、1995(平成7)年から、フェラーリ7台、マセラティ2台など数々の名車を手がけた。

 その1台、スーパーカー「エンツォ・フェラーリ」は、フェラーリ創業55周年を記念したモデルで、創業者の名を冠した特別な車。ちなみにお値段は発売当時で約7500万円だった。奥山は、たった15分で、その超高級車のデザインを描いた。98年のことだ。

                 ◆◇◆

 「今、この人を帰したら、二度とクライアントとして戻ってこない。サンドイッチを出すから、その間に描いてこい」

 トリノ郊外にあるピニンファリーナの開発センター。肌寒い秋の日だったが、39歳のデザイナー、奥山の額には季節外れの汗がにじんでいた。

 それまで2年がかりでデザインを練り上げた「エンツォ」の試作車を前に、フェラーリ首脳陣が苦り切った顔を見せている。

 スーパーカーのデザインとしては、理にかなってはいたはずだが、斬新さに欠けたかもしれない…。奥山のチームのデザインに「NO」を突きつけ、フェラーリの会長が席を立つ。プレゼンは失敗した。とっさに上司が奥山に耳打ちしたのが“サンドイッチ作戦”だった。

 「頭は真っ白。けれど、いつかこんな車を作りたい、と考えてきたアイデアがさっと頭に浮かんだ」

 机に駆け戻るとペンを執り、こちらに、その次はこちらに。せわしなく手を動かしながら、温めてきた構想を白い紙にぶつけた。車の絵にさっと赤をのせ、車輪を描き終えると、自家用ヘリに乗り込もうとするフェラーリの会長の背中を追う。息も切れ切れに、「できました」とデザイン画を差し出した。

 ひと目見て、「なんだ、君たちできるんじゃないか」。会長のゴーサインを得て、名車「エンツォ」のデザインが決まった。

 「不可能を成し遂げ、常識を破るため常に備えるのが僕らデザイナーの仕事」

 常識破りの15分は、まさに奥山の真骨頂だった。

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奥山清行さん=21日、東京・表参道(緑川真実撮影)
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