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【写眼】藤田一咲「ピンク手袋とブルー桶」 (1/2ページ)
このニュースのトピックス:美術・芸術
■日常離れるシュールな魅力
このところ、縦横の比率が1対1の真四角の写真(スクエアフォーマット)が注目されている。プラスチックのおもちゃのようでありながら“アート”っぽく撮れるカメラ「HOLGA(ホルガ)」、残念ながら今夏でフィルムの生産を終えるポラロイドカメラなどでも撮影できることが人気の一因なのだろう。
縦か横か。それは撮影者に対するひとつの呪縛(じゅばく)といえる。真四角の写真を撮れるカメラは、ファインダーも正方形なのに、思わず縦にカメラを構え直したという笑い話もあるくらい、身体に染みついているのだ。
脱力写真家、と自らをたとえる藤田一咲(いっさく)は自著「ましかく写真BOOK」(玄光社)にこう記す。「ましかく写真はタテからもヨコからも解放され、写真を自由に見て感じることができる。しかし、その反面、乱暴な言い方をすれば、ちょっとルーズな写真の形かもしれない」と。
そのことば通り、自由に感じるなら、この作品からはシュルレアリスムの作家、ルネ・マグリットの絵画のような印象を受けた。とりわけ、青空と雲をモチーフにした作品、たとえば羽ばたく鳥の姿に取り込んだ「大家族」や、瞳に映り込んだような「偽りの鏡」をイメージする。桶(おけ)は透き通った空、背景の壁の汚れは雲、といったように…。
意外なものを組み合わせるシュルレアリスムの手法はデペイズマン(配置転換)と呼ばれる。ビル清掃業のOさんの仕事部屋で撮られたこの1枚は、もちろん、仕事に必要な事物ではあるが、こう撮られると決定的にその文脈から離れた姿を鑑賞者に見せつける。そして、それを際立たせるのが、この「ましかく」というフォーマットなのだ。(酒井潤)
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