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【ムツゴロウのいのち万華鏡】「走れ、走れ、犬たちよ」 (1/5ページ)
およそ30年前、私はアラスカで犬ぞりを習った。
アンカレジからさほど遠くないアリエスカという所に、ティムという男が住んでいて、アマチュアに犬ぞりのイロハを教えていた。彼は私に、犬を甘やかしてはいけない、犬に対する命令は、短く、明確であるべきだと言った。
ティムが訊(き)いた。
「お前は、日本で、マッシャーになりたいのか」
マッシャーとは、犬ぞりの御者(ぎょしゃ)、犬ぞりの使い手のことである。私は、首を振った。
「ノー。今から努力してエキスパートになれるとは思えないし、おれ、作家でね、北国の物語を読んでいると、犬ぞりのシーンがたくさん出てきて、それをちゃんと理解したいので、体験してみたいのだよ」
OK、それなら6頭びきがいいだろうと、ティムはそりに犬をつないでくれた。
私は、GO、と叫んだ。
犬が走り始めた。
そりが、ゴツン、ゴツンとはねた。雪原は、なめらかに見えるが、風や気候により、凹凸がかなりあった。







