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【わたしの失敗】現代美術家・村上隆さん(45)(3)
■プロポーズ断られ自問
結婚しようと思った。でも、断られた。
「本当に心の底からプロポーズしたんだろうか? 断られてから自問しました。結局、他人と家族を形成し、自分1人の責任を超えることから逃げてるんじゃないか? だから、本質を見抜かれ断られたんだ」
独りきりで生きていく運命なんだと腹をくくった直後、今度は男から「村上さんに一生ついてゆきます」といわれてしまう。その男は「Mr.(ミスター)」という名のアーティスト。村上の一番弟子として、今でこそ人気が高く、作品は飛ぶように売れるが、当時はまだ海のものとも山のものとも知れなかった。
「これって、もしかして結婚と同じ?」。悩みながらもMr.を雇い入れ、現代美術家としての活動を本格化させていく。
村上は当時、後に出世作となる等身大のフィギュア作品を手がけていた。制作費用は出ていく一方。学園祭の講演やメディアへの出演をこなし、食いつないだ。
「当時は本当に食えなかった。年が越せそうにないときがあって、学園祭でもらってきたタダ酒をパーティーで売って年を越そうとしたり…」
テーブルはMr.と拾ってきた段ボールで作った。「金はなくてもやればできるよ!」とはしゃいでいたら、たまたまやってきた大学の同級生が、今にも崩れそうなテーブルを見て一言。「村上、お前ここまで堕(お)ちたのか」。同級生はあきれながらも5000円を恵んでくれた。家族のように苦楽を共にし、“兄弟仁義”を交わしたMr.との暮らし。どん底の貧乏すら笑い飛ばしてきた。
村上はいまだ独身だが、“家族”は増え続けている。アーティストの発掘を目的に、平成14年から「GEISAI」というフリーマーケット形式のイベントを主催。昨年9月に10回の節目を迎えた若手の登竜門は、12月に米・マイアミへ舞台を移して開かれる。
アーティストをプロデュースする会社「カイカイキキ」の運営も手がける。村上のもとには自然、才能が集まる。その中心にいる村上は、芸術家として希有(けう)な存在だ。
「芸術家は歴史をふりかえって不遇でなかった時代がない。結局、アーティストはアウトローだし、ストレンジャーだし、インディペンデント。それがアーティストになってしまう人の運命。かわいそうな人種なので、お互い助け合っていかないと」=敬称略(猪谷千香)