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【日本人とこころ】岡潔と情緒(下) 未来へつながる思想 (1/4ページ)

2009.4.19 08:26
昭和35年11月3日、皇居で行われる文化勲章の親授式にのぞむ岡潔。後ろは妻のみちさん昭和35年11月3日、皇居で行われる文化勲章の親授式にのぞむ岡潔。後ろは妻のみちさん

 岡潔のいう「情緒」とは何か。岡自身の言葉で確認したい。随筆集『風蘭』(昭和39年)に次のように記している。

 ≪たとえば、すみれの花を見るとき、あれはすみれの花だと見るのは理性的、知的な見方です。むらさき色だと見るのは、理性の世界での感覚的な見方です。そして、それはじっさいにあると見るのは実在感として見る見方です。これらに対して、すみれの花はいいなあと見るのが情緒です。これが情緒と見る見方です。情緒と見たばあいすみれの花はいいなあと思います。芭蕉もほめています。漱石もほめています≫

 解きほぐすなら、「情緒」こそが人間の土台であり、古来日本人は「情緒」によって理解しあい、平和で高度な文化を形成してきたというのだ。岡に即していえば、美と調和をめざす数学の研究で何よりも大切なのは「すみれの花はいいなあ」と感じる「情緒」だった。

 24年に奈良女子大学の教授となり教育に携わるようになった岡は、戦後の教育が「情緒」をなおざりにしていると直観し、教育を晩年のテーマに据えた。

 『春宵(しゅんしょう)十話』(38年)の「一番心配なこと」にこうある。

 《いまの教育制度は進駐軍が師範学校を二段とびに大学にするなど、だいぶん無理をして作ったもので、よくない種子をまいたのは進駐軍だが、しかしそれをはぐくみ育てたのは日本人である。それでも原則から悪くしたのに害がこの程度ですんでいるのは、日本人が情操中心でこれまでやって来た民族だからで、欧米のように意志中心の国なら、すみずみまで原則に支配されるからもっとひどいことになっていたに違いない》

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昭和35年11月3日、皇居で行われる文化勲章の親授式にのぞむ岡潔。後ろは妻のみちさん
湯布院の亀の井別荘
万葉歌碑
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