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【日本人とこころ】向田邦子と含羞(下)戦前家庭への郷愁、共感  (1/4ページ)

2009.3.8 08:21
自宅で愛猫と遊ぶ向田邦子(作家) =昭和54年、東京・南青山の自宅  自宅で愛猫と遊ぶ向田邦子(作家) =昭和54年、東京・南青山の自宅  

 昨年末、『向田邦子愛』(いそっぷ社)を刊行した「向田邦子研究会」の会員5人に向田作品を愛する理由を聞いた。

 40代から60代の会員が口々に言うのは、彼女の描いた戦前の家庭への郷愁と共感である。研究会の代表を務める共立女子大学教授の半沢幹一さんはいまの日本人をこう評する。

 「戦後、自由と平等という旗印の下で、いくつになったら何をするといった規範、人生の節目がなくなってしまいました。そしてアンチ・エージングという言葉が象徴するように、老成することに価値を置かなくなってしまった。肉体が若いのは結構なことですが、精神も老成しないまま…」

 日本から大人がどんどん姿を消している。家庭においても社会においても「半大人」が子供を育てているというのが日本の現状かもしれない。大人が大人の役割を果たせなくなった結果出現したのは、恥じらいを知らない人々の群れではないか。電車の中での化粧はいまさら指摘するまでもない。昼間の食堂をのぞけば、足を組み、肘(ひじ)をついて、マンガや携帯電話をながめながらむさぼる姿をいくらでも目にすることができる。

 彼女は「香水」という随筆にこう書いている。≪男にも女にも恥じらいがなくなったのはこの辺が原因かもしれない。街からあの匂(にお)いと汲取屋が消えたのと一緒に「含羞(がんしゅう)」という二つの文字も消えてしまったのである≫

 あの匂いが「せいいっぱい気取ったところで、人間なんて、こんなもんじゃないのかい」と、人を謙虚にさせた。代わって登場した水洗トイレは、「含羞」の2文字を下水道にザーッと流してしまった。

                 

このニュースの写真

自宅で愛猫と遊ぶ向田邦子(作家) =昭和54年、東京・南青山の自宅  
東京・南青山にある向田邦子の終の棲家となったマンション。手前は大松稲荷
実践女子大学「向田邦子文庫」に収められた蔵書
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