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【話の肖像画】人生捨てたもんじゃない(4)作家・重松清さん
■「引き分け」や「負け」の人生もあり
−−「家族の絆(きずな)」にこだわっているそうですね
重松 「家族が崩壊した」とよくいうけれど、果たしてそうでしょうか? いまの日本は、政治も経済も社会も学校も揺らいでいます。そんな時代に家族だけが“古き良き時代”のちゃぶ台を囲んでいるなんて逆におかしいでしょう。「家族の絆」は昔の絆とは違った形で残っている。2009年なりの絆があると思うのです。
−−なるほど
重松 平均寿命が60代だった時代と80代の時代では、おじいちゃん、おばあちゃんの存在や定年後の人生のあり方が違う。兄弟が多かった時代と一人っ子の時代も違う。大学へ行く人が少なかった時代は18歳で社会に出たけれど、いまは22、23歳まで親と一緒にいる。社会が変わるように家族も変わるのです。そうした家族の変化を殊更「崩壊」とか、「解体」と言いたがるのは、逆に家族だけは変わらずにいてほしい、というノスタルジックな思いがあるからではないでしょうかね。
−−さて、2009年の日本をどう見てますか
重松 こんな激動の時代に、親が子供に見せる姿は2通りあると思います。どーんと揺るぎない姿をみせるか、それとも揺れの中で生き延びる道を見せるか。上半身は揺らぎっぱなしでフニャフニャだけど、足は踏ん張っているお父さん。マッチョでどーんと構えているけど、コロンと簡単に転んじゃうお父さん。どっちがいいのかな?
−−うーん
重松 僕はね、「引き分け」や、ときには「負け」の人生もアリでしょ、と思える大人がいたほうが、子供は楽になると思うのです。メディアはすぐに黒白つけたがるでしょう。「勝ち組」「負け組」というのもそうですね。でも二分法じゃないんですよ。いろんなヒーロー像や成功への価値観があってもいいじゃないですか。
−−「あいまいさ」の効能ですか
重松 (サッカーなら)「引き分け」でも勝ち点1はもらえる。軽くやった「勝ち点3」よりもまじめで誠実な「1」の方が明日につながるでしょう。ウイン−ウインの関係じゃなくて、ドローでもいい。そんな小説を今年も書き続けたいと思っています。=おわり(喜多由浩)

