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【産経抄】12月22日
「工員が歌人に戻る入口か職場出でたる空に夕月」(大阪・忠岡町 田中成幸)。きのうの産経歌壇にあった一首。大勢の「歌人」たちが、新聞で自分の作品を探したことだろう。コピーライターの吉竹純さんもそんな歌人の一人だ。
▼3年前、小紙主催の「与謝野晶子短歌文学賞」で、文部科学大臣奨励賞を受賞した作品を、コラムで取り上げたことがある。短歌をつくり始めたのは、電通を早期退職してまもなくの平成13年から。現在は新聞6紙の歌壇に投稿している。
▼その投稿入選歌を集めた歌集『過去未来』(河出書房新社)が、送られてきた。あとがきでは、現代かなづかいでしか載らなかった朝日歌壇が、今年突然、旧かなを認めるようになった背景を探ったり、清音だけ、あるいは濁音だけの歌づくりに挑戦したりしている。
▼仕事柄、言葉に対する嗅覚(きゅうかく)が鋭いのだろう。「言葉でコミュニケーションする楽しさと広がりを知れば、世の中を騒がす凶悪事件のいくつかは、防げるのではないか」との指摘は、まさにその通りだと思う。
▼「万葉集」の時代から、歌は日本人にとってなくてはならない存在だった。外国の新聞には、歌壇や俳壇のように、読者から詩歌を募集して、掲載する欄はほとんどないらしい。危機に瀕(ひん)する日本語を支える、最後の砦(とりで)のひとつかもしれない。
▼きのうの産経歌壇に、吉竹さんの入選歌はなかった。歌集のなかから、今の時節にあう一首を引いておこう。「次の角曲がれば去年のクリスマスあるやうな気がするクリスマス」。歌集に添えられていた短い手紙には、「貴紙を買うのは日曜日だけ」と申し訳なさそうに書いてあった。残念ながら、このコラムが吉竹さんの目に触れることはなさそうだ。
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