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【断 呉智英】「変」な時代来る
このニュースのトピックス:コラム・断
十二日清水寺で今年を表す漢字として「変」が大きな紙に書かれた。これを見た私は、なるほど今年は「変態」がはやったからなあ、と思ったのだが、アナウンサーの言うことは違った。アメリカの次期大統領オバマの「チェンジ(変革)」、世界的な経済「変動」、気候の「異変」のことなんだって。揮毫(きごう)した寺の僧は「政治、経済、社会を“変えて”ほしいという気持ちの表れ」と語った。
考えてみると、近頃は「変態」という言葉を聞かない。変態という概念がなくなってきたからだ。変態とは変態性欲(異常性欲)の略で、かつては生殖に結びつかない性行為は一括して変態と呼ばれた。八〇年代までは自分にゲイだのレズだのフェチだのSMだのの癖(へき)があることは公言できなかった。それが今じゃ雑誌やテレビで逆に人気者だ。背景には、異常なんてないのだ、変なのも個性のうちだという、それこそ異常なイデオロギーがある。
変態は変態でいいではないか。変態が、行政上、法律上の差別を受けたら問題だろう。なぜなら、行政や法律は近代国家の構成員に平等に適用されるべき一種のルールだからだ。しかし、ルールに定めたからといって、変態が変態でなくなるわけではない。こんな簡単な法学のイロハも分からない自称識者が多くて困る。
「変態」が抹殺されるのと入れ替わりに「エッチ」が広がってきた。若者言葉で性行為一般を表すが、これ、本来「変態」を頭文字Hで表す隠語だった。すごく「変」な時代になっていると思う。(評論家)
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