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【現代(いま)に生きる時事新報】(7) (1/2ページ)

2008.11.20 08:07

大成功の出版人「福澤屋諭吉」

 先に福澤諭吉の3大事業として、慶應義塾、時事新報、交詢社をあげた。啓蒙(けいもう)思想家、社会教育家、言論人としての顔を使い分けていたわけだが、ほかに大切な事業が2つある。

 出版と演説。出版は慶應義塾出版局、のちに合資会社・慶應義塾出版社として時事新報発刊の母体となった。組織としては別だが、大学出版としての役割は今、慶應義塾大学出版会株式会社が受け継いでいる。

 出版事業では、「福澤屋諭吉」なる名前がある。シャレではない。出版人として起業するとき、東京の書物仲間問屋組合に加盟申請した際の署名だった。昨年、同出版会から刊行された『「福翁自伝」の研究』の年譜や『福沢屋諭吉の研究』には、「明治2(1869)年1月、本屋仲間より要求され、“福澤屋諭吉”名義で出版業組合に加入す」とある。

 ≪初刊からヒット≫

 最初の出版は明治2年の『西洋事情』。福澤は江戸末期、ちょんまげ姿で咸臨丸に乗り込み、米国を見聞したほか、文久遣欧使節団の一員として欧州を訪問し、欧米の文明、文化を吸収した。福澤は、それを日本に知らせて、新国家の建設に役立てることが使命と考え、著作、出版、演説による社会教育を目指した。啓蒙思想家・福澤の原点だ。

 『西洋事情』は米英、オランダなどの政治、経済、社会、軍事の実情、歴史などをわかりやすく紹介、解説した。日本の人口は当時約3000万人。文字を読める人が多いとはいえない時代ながら、『西洋事情』は25万部を出版するベストセラーになった。

 福澤の最も有名な「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らずと云へり」は、故郷・中津の小学校の教科書代わりに書き下ろした『学問のすゝめ』の冒頭句だった。同書は明治5年、出版されると、爆発的に広まり、続編が17編まで出された。初版20万部、全編合計三百数十万部、現在も版を重ねているのだから、わが国最大のベストセラーの一つといえる。

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