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【断 呉智英】「前衛芸術家」の正体
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芸術の秋だそうだ。結構なことだが、現代芸術と称する愚行の跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)は何とかならんものか。実験的だの前衛的だのと誇大な屁(へ)理屈を付けて学園祭の悪ふざけ程度のことをやっているだけだ。学園祭なら大目にも見ようが、「お芸術」となるとそれではすまない。公的な施設と公的な経費を使い、然るべき権威も得るからだ。
六日の朝日新聞は「『伝説』40年ぶりに復活」として、一九六八年現代彫刻展のために野外に作られた関根伸夫『位相』が東京の公園で再制作されたと報じている。この『位相』とやらは、地面を丸く茶筒状に掘り抜き、その土をまた茶筒状に積み上げたもので、確かに穴にも積み上げた土にも「地層」が観察できる。しかしどこにも「位相」なんてありゃしない。
位相とはphaseの訳語で、正弦曲線の変化や振動系の時間的変化など、連続して変化する見え方のことだ。もっと分かりやすい例は月の満ち欠けだ。百科事典で「月」を引くと「月の位相」として連続して変化する月の満ち欠けの図が出ている。前衛芸術家って、言葉を誤用しながら得意がっているだけの愚かな“出たがり”に過ぎないんじゃないかと前から思っていたが、四十年たっても誰もこの誤用にさえ気づかない。
一九八○年代から猛威を振るった現代思想は科学用語を誤解・誤用した愚論に過ぎないことが、十余年前アラン・ソーカル事件で暴露され、権威は失墜した。現代芸術だって同じじゃないかと思うんだけど、こっちはいまだに権威を保っている。(評論家)
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