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【人、瞬間(ひととき)】あの夕日 作家・楊逸さん(44)(上) (1/3ページ)
このニュースのトピックス:言語・語学
■「土踏まず」の原風景
「ここよ、ここ。こうするの…」。日本語で何と言うのだろう? 気付けば、靴下を脱ぎ捨て、足の裏のその場所を押していた。
アルバイト先のプラスチック製造工場。同僚の日本人女性と、疲れをとるマッサージの話題で盛り上がっていたはずなのに、もどかしい。気持ちが晴れない。
「何を見てもうまく言葉が出てこないのは悔しい。ナマ足さらして説明するしかなかったですから」
横浜の親戚(しんせき)を頼って22歳で来日してから約2年。予想以上に高い、言葉の壁に苦しんでいた。「からい」と言えず、わさびの利いたさしみは涙目で我慢。体調不良のときも病状を説明できず、咳払いするしかなかった。
「夜勤明けに通っていたから、日本語学校の授業は寝てばかり。教科書に載っていた言葉はほとんど記憶にない。人にどんどんぶつかって、体で覚えていきましたね」
◆◇◆
ナマ足で説明した足のツボは、とりわけ思い出深い日本語だ。その日、同僚と別れて自宅アパートに戻り、すぐに辞書を引いた。知りたかった足裏の部分は「土踏まず」と書いてある。音の響きがおかしくて口ずさみながら笑った。だが、「好奇心だけは旺盛」という楊逸の頭は別の疑問でいっぱいになる。
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