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【旬の民俗学】相撲 神事性、再考を

2008.10.4 08:15
土俵祭を見守る武蔵川理事(右から2人目)ら=両国国技館土俵祭を見守る武蔵川理事(右から2人目)ら=両国国技館

 近ごろ、大相撲での不祥事が話題になっている。

 国技であり、それゆえに「礼」を重んじるべき、とする。日本では、「相撲は、ただの格闘技ではない」、という暗黙の合意があるのだ。これを、外国人の力士に理解させようとするが、なかなかむつかしい。いや、日本人の若者についても同様であろう。

 相撲は、古く、神事に関与して発達をみた。『日本書紀』には、野見宿禰(のみのすくね)と当麻蹶速(たいまのけはや)の天覧相撲の記事がある。そこから、宿禰が相撲の始祖神として祀(まつ)られるようになった。が、宿禰らの相撲には、どうも神事性が薄い。

 平安時代になると、宮中での相撲が定例化した。初秋の行事として「相撲節会」が行われるようになったのだ。諸国から秀手(ほで)(力士)を集め、東西に分けて競わせ、その結果で農作物の豊凶を占った、と記録に伝わる。ここで、相撲が神事性をおびてくるのである。

 民間での相撲神事は、各地で現代にまで伝わっている。いわゆる秋まつりに、境内で子ども相撲が演じられる事例が多かろう。相応の賞品を授与して勝負をたたえるが、その本意は、五穀豊穣(ほうじょう)を祈願しての奉納にある。

 特殊例として、独り相撲の奉納がある。伊予三島の大山祇(おおやまづみ)神社の御田植祭でのそれがよく知られるが、精霊を相手に相撲をとるのだ。その精霊は、稲魂(いなだま)と伝えられており、結果は2勝1敗で精霊の勝ち。それで豊穣がかなう、とされるのである。

 一方の大相撲は、江戸末期のころから定期興行がはじまった。明治になると、軍国主義のもとで国威高揚のための盛況を呈するようになった。

 その大相撲でも、たとえば清祓(きよばら)いの塩、地霊を鎮める四股(しこ)、結びの神緒(かみお)(横綱の土俵入りでの注連(しめ))などが伝わる。相撲における神事性の伝統を伝えているのである。

 作法の粛正とはいうが、形式の問題ではないのだ。能や神楽の太夫と同様に力士を位置づけて再考すべきであろう、と思う。(民俗学者 神崎宣武)

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土俵祭を見守る武蔵川理事(右から2人目)ら=両国国技館
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