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【断 二宮清純】チーム支えた現場主義
このニュースのトピックス:プロ野球注目選手
プロ野球のスカウトはテレビドラマに出てくる刑事の印象と重なる。「コイツはホンボシに違いない」とニラむと足しげく球場に足を運び、丹念な聞き込みを行う。隠密行脚に徹し、家族にも行き先を告げない。表情は柔和だが、目付きは厳しく、立ち居振る舞いにスキがない。何しろ同業者を出し抜くのが仕事なのだ。お人よしではこの稼業は務まらない。
伝説のスカウトが死去した。広島カープの黄金期を築いたことで知られる木庭教(きにわさとし)さんだ。享年81。
目利きのスカウトだった。連続試合出場の記録保持者で国民栄誉賞にも輝いた衣笠祥雄は木庭さんが見いだした選手の中で最高の逸材といっていいだろう。
「平安高校のグラウンドで彼の練習を見ているとき、僕の目の前にバットがコロンと転がってきたんじゃ」。たばこをくゆらせながら木庭さんは言った。「それを拾ってやった。と、これがズシリと重いんだ。当時の高校生は920グラム(のバット)が相場だった。ところが彼のは優に950グラムはあるんじゃ。しかもその重いバットをビュンビュン振り回す。コイツはモノになると思ったもんだよ」
最後まで現場主義を貫いた人でもあった。逆指名制が導入された際には「これで選手が裏金を求めるようになる。アマにとってもプロにとっても百害あって一利なしの制度じゃ」と机を叩(たた)いて怒っていた。プロでの選手経験はなし。しかも籍を置いたのは、いずれも当時の弱小球団。気骨と情熱の尊さを教わった。クセのある広島弁をもう一度、聞きたかった。(スポーツジャーナリスト)