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【グローバルインタビュー】エイズ対策、新たな段階に ピーター・ピオット国連合同エイズ計画(UNAIDS)事務局長 (1/2ページ)
国連のエイズ対策推進機関である国連合同エイズ計画(UNAIDS)のピーター・ピオット事務局長が第4回アフリカ開発会議(TICADIV)開催中の5月29日、会議会場の横浜国際平和会議場(パシフィコ横浜)で産経新聞とインタビューし「エイズ対策はこれまでの成果を踏まえ、新たなフェイズ(段階)に入ろうとしている」と語った。エイズの原因となるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)の感染はこれまで拡大を続けてきたが、最近になってわずかながら減少の傾向が見えつつあるからだ。
ピオット氏は1994年12月にUNAIDS事務局長に就任。世界のエイズ対策の推進役として活躍してきたが、今年12月に退任する予定。この14年間を振り返り、世界のエイズの流行の現状と対策の課題などを聞いた。
−− 14年間の任期で最も思い出に残ることは?
エイズが世界の重要課題として認識されるようになったことです。UNAIDSが発足した当時、エイズの流行と取り組んでいたのはエイズアクティビストとエイズ診療にあたる医師、そのほか比較的、少数の人たちでした。いまはたとえば、この第4回アフリカ開発会議でも、多くの国の大統領や首相が演説でエイズに言及しています。福田首相もお話しされていましたね。これは本当に大きな変化です。そういうことがなければ、エイズとの闘いは困難だったでしょうし、これからも闘うことはできません。
−− 世界のエイズ対策は現在、どのような状況なのでしょうか。
私たちはいまエイズとの闘いの新しいフェイズに入っています。成果を生み出しつつあるのです。途上国では300万人が抗レトロウイルス治療を受けています。このうち200万人はアフリカです。これは国際開発分野におけるかつてない成果です。いくつかのアフリカの国、とりわけ東アフリカの国々では、HIVの新規感染が減少しつつあります。この成果を持続させ、より拡大させることが大切だと思います。
−− UNAIDSと世界保健機関(WHO)は昨年末の推計で、世界のHIV陽性者数を大きく下方修正しましたね。
推計方法が改善された結果、いくつかの国でHIV陽性者推計数が下方修正されました。とくにインドの修正は大きかった。データや情報の収集方法が大幅に改善されたからです。たとえば、5、6年前にはインド国内でHIVに関するデータを得られる産科診療所は100カ所にとどまっていました。いまは1200カ所に増えています。10倍以上です。これまでの推計は都市部では正確だったのですが、農村部の推計が大きく違っていました。
−− 政治的な配慮で意図的に多く推計していたのではないかといった批判を聞くこともありますが。
推計は科学的手法で進められており、政治的な配慮が介入することはありませんし、そもそも複雑すぎてできません。推計作業には何百人もの専門家が関与しているのです。とても意図的な操作などできません。我々は確実に以前より正確な数字を把握しています。大きな変更が必要になることはもうないでしょう。
−− 下方修正の結果、エイズの流行は峠を越したかのような印象を持つ人もいます。
アフリカにしても、問題が解決されたわけではまったくありません。HIV陽性者2人に対して新たに治療が提供できるようにしても、その間に5人が新たにHIVに感染しているという状態です。治療が必要な人の数と、実際に治療を受けられる人との間のギャップはいまなお広がり続けているのです。
−− エイズはすでに普通の病気であり、特別に扱うべきではないという意見もあります。
確かにそういう主張をする人はいます。しかし、私は賛成できません。いわゆるエイズのノーマライゼーション(標準化)はまだ、実現できていない。あなたがもしHIV陽性だったとして、米国に行きたいと思っても法律上、米国内には入国できないことになっています。これが、がんや糖尿病の人だったら、そんなことはおかしいとほとんどの人が言うでしょう。もちろん最終目標としてはノーマライゼーションを目指すべきです。たとえば、治療はノーマライズできます。私の母国ベルギーでは、10年前にエイズの治療を受けようとすれば、特別な病院で専門医に診てもらわなければならなかった。現在は一般の医師が担当し、複雑な症状が出たときだけ専門医のところに行けばいい。途上国でHIV陽性者が治療を受けられるよう保健医療体制を強化することは重要だと思います。HIV感染の予防に関しては、セックスや薬物使用について話さなければならず、対象に応じた特別のキャンペーンが必要です。日本でも米国でもジンバブエでも南アフリカでも、現在の私たちの社会では、対象にあわせたプログラムは重要です。

