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石橋信夫記念館開館1周年特別企画・大和ハウス文化フォーラム (3/5ページ)
≪哲学者 中沢新一氏≫
■「経済」と「宗教」根は同じ
聖徳太子を通して考えたい問題というと、国の豊かさとそこに生きている人の心の豊かさというのが一番大きなテーマになる。端的に、経済と宗教の問題ということもできる。経済と宗教は対立しているように思えるが根は同じ。日本人が築き上げた経済システムと神仏習合というものの考え方は、深い所でつながっている。
市場社会では、20世紀の終わりごろから自由主義が勢いを取り戻した。自由に放任した方が国の富、経済は発展すると。ところが、経済は倫理性を失って、お金だけが自動的に動いていくような世界に人間を巻き込んだ。心の豊かさとか正しい生き方とか、そういうものをなぎ倒すような力をふるうようになった。
日本は経済競争ではトップランナーではなくなっているが、結構なこと。トップランナーを目指す国では、人間の心の豊かさや実質的繁栄は乖離(かいり)を起こし、人間を破滅させる。
経済と人間の生き方、心の問題をどうやって正しい軌道に引き戻したらいいかは未解決だが、聖徳太子は、この問題に、先駆的にある種の解答を与えていた。日本人とは何か。経済の理想とする所は何か。宗教と経済をつなぎ、世界に類例のない解決方法を示した。日本の宗教観には、現代が直面する問題の解決法が備えられている。
経済で後れをとっても、今度は物の考え方や心のあり方の面で、人類に重要な貢献のできる文化を生きる民族であると思える。そういう意味で、聖徳太子を今取り上げることは重要だ。
【プロフィル】中沢新一
なかざわ・しんいち 昭和25年、山梨県生まれ。哲学者。多摩美術大学芸術人類学研究所所長、芸術学科教授。チベットで仏教を学んだ。著書に『チベットのモーツァルト』『森のバロック』『フィロソフィア・ヤポニカ』『イカの哲学』など。





