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【竹内薫の科学・時事放談】粘菌 「頭の良い」単細胞生物 (1/2ページ)
オピニオン誌に連載を始めることになり、ここのところ、取材に駆け回っている。とはいえ私は科学作家なので、政治や経済の話ではなく、日本の面白い科学を紹介するのであるが。
先週も北海道大学に粘菌の取材に行ってきた。粘菌と言っても、あまりなじみがないかもしれないが、雑木林の朽ち木の中や枯れ葉の下などにふつうに棲(せい)息している。その名のごとくネバネバしている(ように見える)菌類だ。単細胞なのに核がたくさんあり、大きさも数ミリから数メートルまで幅があり、動物でも植物でもない、変幻自在な生き物である。
1973年、アメリカの田舎町で、住民が、大きく成長した粘菌を宇宙から飛来した未知の生命体と勘違いし、FBIまで出動する騒ぎとなったこともある。
北海道大学の中垣俊之准教授は、粘菌のネットワークの専門家だ。2000年に英科学誌ネイチャーに発表した「粘菌が迷路を解く」論文で世界的な脚光を浴びた。粘菌が迷路を解く? どういう意味なのか。
粘菌のライフサイクルには変形体と呼ばれる時期がある。からだを網目状にして、変形しながら移動するのだ。網目は「血管」のようなもので、栄養分や化学信号が流れており、粘菌が移動する際の「脚」の役割も担っている。
中垣さんは、迷路の出口に粘菌の餌をおき、粘菌が入り口から出口までをどうつなぐか調べた。すると驚いたことに、時間とともに粘菌の網目が変化し、遠回りの経路は細くなって消え、近道の経路だけに粘菌の網目が残ったのだ。粘菌は単細胞にもかかわらず、無駄な経路を省き、かなり賢く迷路を解いたわけだ。
最近の研究で中垣さんは、粘菌が単に一番効率のいい経路だけを確保するのではなく、からだが分断されにくいような網目構造をとることも発見した。何かが落ちてきたり、動物に踏まれたりして、偶然、網目のどこかが切れたとき、粘菌のからだが真っ二つに切れてしまったら困る。だから、常に全体としてつながっている可能性の高い網目構造をとるのである。

