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【断 中条省平】作家としての倫理に背く
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嶽本(たけもと)野ばらさんが新作を出しました。そう、昨年9月、大麻不法所持現行犯で捕まった作家です。題して『タイマ』。
好奇心に駆られて読んだ私がばかですが、買って損しました。この人、完全に世間を舐(な)めてます。
この本は、カート・コバーンとコートニー・ラヴ、「そして/傷を背負いし全ての者達に」捧(ささ)げられています。本書で嶽本さんを逮捕した警官の言葉を借りれば、「ふざけんじゃねぇよ!」です。命を賭けて自らの音楽創造と対峙(たいじ)したコバーンの「傷」と、ご自分の大麻道楽を比べるとはいい度胸です。
本書で一番面白かったのは、警察による取り調べと家宅捜索の実際ですが、嶽本さんは終始、自分は趣味の高尚なアーティスト、警官はがさつなオッサンたち、というスタンスを崩さず、警官たちの片言隻句、一挙手一投足をおちょくっています。しかし、そのわりにはこの人の文化的教養の底の浅さが随所でむき出しになるのです。コバーンについての記述など、ゴシップ雑誌並みの水準でこちらが赤面してしまいます。
嶽本さんがコバーンにこだわるのは、『タイマ』は自分とストリッパーの恋物語でもあって、その恋をコバーンとラヴの悲劇的恋愛と重ねあわせているからです。それは勝手ですが、作家として許せないのは、ラストまで耐えて読み進んだとき、「この物語は、フィクションです」との事実偽装を認める一文が出てくることです。もう一度言わせてもらいます。「ふざけんじゃねぇよ!」(学習院大学教授)