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【青雲の大和】(212)新羅の砦 (1/2ページ)
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玄理(くろまろ)には、大和の最高顧問であり勅使であるという自負がある。新羅(しらぎ)の重臣どもの脅しに屈して、命乞いをするような卑屈なまねはできない。
しかしその一方で、このような愚かしいことで命を落とせない、とも思うのである。
「忠告はもう一つある」
眼に冷笑をうかべる●曇(ひどん)をまえに、玄理は覚悟を決めていった。
大国唐に祖国を売りわたそうとするこの者どもにも、民族の血が流れており、心の痛みがあるにちがいない。それに賭けてみるつもりである。
「もし、あなたがたが女王を廃し、英邁(えいまい)な王を戴こうというのであれば、われら大和の使節団はそれに干渉するつもりはない。しかし、新王を唐からひきいれ、新羅の国民をそのまえにひれ伏させようという意図があるなら、それは捨てたほうがよい。なぜなら……」
そこまでいうと、●曇はあわてて通事にむかって新羅語への訳をやめさせた。出口をかためる兵に、●曇らの陰謀がそのままつたわってしまうからである。
「われらが決起したのは、そのようなものではないぞ」
●曇は声をはりあげ、玄理にではなく兵にむかっていった。
「北から西から句麗(くり)(高句麗)、百残(ひゃくざん)(百済(くだら))に攻められ、わが新羅はいま、建国いらいの苦境にある。われらは敵を倒し、国を救わねばならない。皆の者、よくきいておけ。これは救国の義挙である。おまえたちは皆、救国の義兵である」
一瞬に態勢を立てなおすところは、●曇なる者、やはりただの佞臣(ねいしん)ではない。
「わかりましたかな、大使」
そばから廉宗(れんそう)が口をはさんだ。
「いや、忠告したいのはそのことである」
廉宗を無視して、玄理は●曇にいった。