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【産経抄】5月4日
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デービッド・アッテンボロー氏の著書『鳥たちの私生活』を読むかぎり、ハクチョウはあまり器用な鳥ではないらしい。飛び立つときには短い足で湖面をたたき、興奮したように懸命に羽ばたく。それでやっと空に舞い上がることができるのだそうだ。
▼飛ぶ鳥の中では最も体が重たいからである。着地するときにも水面を選ぶが、水しぶきで姿が見えなくなるほどの勢いで突っ込む。イメージとは裏腹の不格好さだ。もっともその後は貫禄(かんろく)を取り戻し、なにごともなかったように泳ぎ去るのだという。
▼そのハクチョウがとうとう鳥インフルエンザに感染した。秋田県の十和田湖畔で先月みつかった3羽の死骸(しがい)から毒性の強いH5N1型のウイルスが検出された。これまでこのウイルスが検出されたのは西日本、それもほとんどはニワトリだったから、地元の人のショックは大きい。
▼感染ルートは地理的にみて、北のシベリアや中国東北部というのが有力なようだ。京都産業大の大槻公一氏によれば、北へ帰る途中のカモからという疑いが強いという。カモはインフルエンザへの抵抗力が強く、発病する前にハクチョウにうつした可能性があるらしい。
▼ひと口に鳥といっても、進化の過程で飛ぶのをやめたのもいれば、ハクチョウのように小回りがきかず、飛ぶのが得意でない鳥もいる。インフルエンザに関しては、そんな俊敏さを欠く鳥たちが犠牲になる。何だか人間の世界を見るようでもある。
▼むろんまだ鳥から鳥への段階だ。人が鳥インフルエンザを発症した例は日本ではない。だが世界的に見れば、いずれ人から人にうつる新型インフルエンザに変異する恐れが強い。「鳥たちの私生活」に巻き込まれないためには用心深さが欠かせない。