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【青雲の大和】(208)新羅の砦 (2/2ページ)
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遠目にも、その貧しさはおおいかくせず、百年、二百年とつづく三韓の泥沼の戦いが、民衆の生活を追いつめているのがわかる。
しかしその風景は、玄理が留学生としてはじめて大陸にわたり、隋の煬帝(ようだい)治下のすさんだ国情を眼にしたときとは、どこかがちがう。ここ新羅では荒廃したようすがなく、貧しいなりに救いが感じられるのである。
もし廉宗らの策謀が功を奏して、この国が唐の属国もしくは属州として組みこまれると、どうなるか。新羅の民は高句麗、百済、そしていずれは海をへだてた大和を征服する侵略の先兵として動員されるであろう。彼らが日々の安寧と唐のすぐれた文化を享受することは、ほとんどありえないのである。
やはり国家は、あくまで独立を保持しなければならないと思う。民族はみずから立ち、みずから決しなければならぬ。
玄理がいま、新羅に乗りこんで成そうとしているのは、大和と半島三国それぞれの独立と安寧を未来にわたって保障することである。そのためにはまず、新羅を唐の属国、属州にする陰謀を打ちくだかねばならない。
白い雲の浮かぶはるかさきに、城壁らしい石造りの長大な壁がみえてきたのは、冬の陽(ひ)が山の端に傾きかけたころだった。
左手には鈍い灰色の湖面がひろがっていて、夕陽をはねかえしている。
「みよ、あれがわれらの明活山城である」
ながく沈黙をたもっていた廉宗が、なぜか不敵な笑いを浮かべていった。(編集特別委員)
●=田へんに比