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【青雲の大和】(208)新羅の砦 (1/2ページ)
真冬の新羅(しらぎ)は鋭利な刃物で斬りつけてくるような寒さながら、空は透きとおるように晴れわたっている。山々は低くなだらかで、景色は大和の飛鳥あたりとあまり変わらない。
港から王城につうじる官道らしいよく整備された道を、玄理(くろまろ)は新羅武官に先導され騎乗して進んでいった。
すぐあとに、副使の中臣(なかとみ)と反女王派の重臣、廉宗(れんそう)が馬首をならべてついてきている。
さらにうしろに文麻呂(ふみのまろ)と新羅側の武官の長がつづき、あとは十人ほどの騎馬兵である。
腰に剣を帯びた兵が付き従っているのは、大和の正使への表敬というより、玄理にすれば護送されていく感じである。
「これより大使、副使に滞在ねがう明活(めいかつ)山城にご案内する」
廉宗はそういったが、それがどこにあるのか、なんのために山城に泊まらねばならないのか、いっさい説明はない。
「大使、女王との会見をもう一度もうしいれてみましょうか」
副使の中臣がうしろから馬をよせてきていった。
「いや、しばらく出方をみる」
玄理は答えて、あとは口をつぐんだ。
明活山城でこれから会うという●曇(ひどん)なる人物が、さて何者であるか。重臣の最高位、上臣(じょうしん)というのは、かつての大和の大臣(おおおみ)に似た地位であるときいている。その者が女王に代わって新羅を代表するかたちであらわれるならば、いまこちらからあえて動くことはない。
港から王城の地につうじる官道は、まず南西へむかい、山間部を過ぎたところで二手にわかれていた。
先導する武官はそれを左手にとった。おそらく右手、つまり西側に王宮があり、左手が明活山城であろうと思われるが、廉宗からはなんの説明もない。うしろに従う騎馬兵の馬蹄(ばてい)の音が、ひとかたまりになって響いてくるのみである。
王城の地が近づくにつれ、山すそに点在する民家の数がふえてきていた。