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【青雲の大和】(207)新羅の砦 (1/2ページ)
大使の玄理(くろまろ)が新羅(しらぎ)側の案内で、港に建てられている舎屋にはいると、十数人の武官をしたがえた新羅の要人が待っていた。
中央が重臣の廉宗(れんそう)である。左右は同じく反女王派の者であろう。大和の正使である玄理にたいし、うやうやしく拝礼すると、廉宗がややかん高い声で話しだした。
−−韓(から)さえずり、
と、大和でいわれている韓語である。玄理にはむろん、意味がわからない。わきには新羅側の通事(通訳)がひかえているが、ひとことも訳そうとせず、廉宗が話すのをきいているだけである。
玄理はしゃべりつづける廉宗を正面からみすえた。黒鳥をそのまま頭に乗せたような仰々しいばかりの冠をつけているが、顔はどちらかといえば小づくりで、目尻がはねあがっているほかは、この男の才気をしめすものはなにもない。
廉宗は大和の使者を迎える辞を建前上、自国語で述べたてたのであろう、ひと通りのあいさつを終えると、さっと漢語にきりかえていった。
「これより大使、副使に滞在ねがう明活山城(めいかつさんじょう)に案内いたします。わが国随一の風光明媚(めいび)な城郭であります。存分にお楽しみいただけるものと思います」
廉宗がいいおわるや、背後にいた武官十数人が靴音(くつおと)をひびかせて、玄理と副使の中臣(なかとみ)に付き従うためにでてきた。あらかじめ命じられていたのであろう、前線の軍隊行動をみるような動きである。
「待て」
玄理が制した。
「われは大和の国を代表する正使である。まず爾国王(じこくおう)と会見し、天皇の詔(みこと)のりを伝えねばならぬ。その手はずをととのえてもらいたい」
いうと、武官らは動きをとめ、廉宗の顔をみた。
「いや、おことばであるが、わが王はいま療養中であって、病が癒えるまで何人たりとも謁(えつ)することは不能である」