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【断 青沼陽一郎】世界を利用した中国
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北京五輪の聖火リレーが、世界を駆け巡ってようやく中国国内に入っていった。その間、チベット弾圧に抗議する輩(やから)の妨害と、これに反発する中国国民のデモンストレーションで、聖火の駆け抜けた都市は、平静を奪われた。
日本では長野だった。いい思い出はないのだが、長野は私の出生地。リレーの出発地を辞退した善光寺は、中学、高校時代の通学路、替わってスタート地点となった地は幼稚園、小学校へ通った道だった。よくぞ、あんなひなびた場所で大騒ぎできたものだとテレビ中継を眺めていたら、やたらに五輪を「平和の祭典」と称する声が聞こえてきた。記憶の静かな街並みと、バスで集まった中国人の畳大の紅旗が不釣り合いに思えた。
そもそも、近代五輪の礎は1936年にヒトラーが催したベルリン五輪にある。ナチスドイツが自国民の優越性の誇示に使い、初めて聖火リレーも誕生した。80年モスクワ、84年ロサンゼルスは冷戦の雪解けを目指したが、両陣営がおのおのにボイコットして、平和利用が見事に失敗している。長野五輪は利権誘導で念願の新幹線ができた。おかげで、東京からの日帰り客が増え、宿泊客の激減に悲鳴を挙げたのも善光寺なのだが。
北京五輪のうたい文句は「ONE WORLD ONE DREAM」。チベット騒乱から妨害が入った世界聖火リレーは、かえって中国国民の危機感を呼び覚まし、国内を団結させることに貢献した。中国は見事に世界を利用したのである。(ジャーナリスト)