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【青雲の大和】(199)この日のために (2/3ページ)
このニュースのトピックス:青雲の大和
その若い男が走りながら大声をはりあげた。
「待ってください、わたし、朴井雄君(えのいのおきみ)でございます」
先日、刺客の動きをさぐるために大伴邸によばれた大海人皇子(おおあまのおうじ)つきの舎人(とねり)である。
玄理は馬首を返して待ってやった。
朴井雄君は玄理の足下に駆けよると、ひざまずいて玄理を仰ぎみた。
「もうしあげます。いま、御前(おんまえ)につれてまいりましたのが、倭馬飼嶋(やまとのうまかいのしま)でございます」
雄君がその名を口にしたとたん、衛兵二人がさっと槍をむけた。国博士(くにはかせ)の命を狙う刺客の名を兵はきかされているのである。
男は槍の穂先のまえで、ゆっくりと膝(ひざ)を折り、地に手をついて玄理に拝礼した。男の顎(あご)は黒々としたひげに覆われ、鈍い光を発する眼はわずかに血走っている。
「槍をひけ」
玄理は兵に命じ、馬を降りた。
兵の一人が男の背後にまわり、一人は玄理からわたされた馬の手綱(たづな)をもって立った。