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【産経抄】4月26日

2008.4.26 02:35
このニュースのトピックス産経抄

 先日亡くなった民俗学者の吉野裕子さんは、大正5(1916)年の生まれである。著書『カミナリさまはなぜヘソをねらうのか』では「ずいぶん長いこと生きてきました」と自己紹介している。女学生時代に二・二六事件を目撃したという。

 ▼晩学の人であった。大学を卒業したのは30代後半で、民俗学の道に入ったのは何と50歳のときである。しかし、その後の年齢を感じさせない研究ぶりには目を見張らされる。著書は20冊以上に上り『カミナリさま…』は7年余り前、84歳のときに上梓(じょうし)している。

 ▼吉野さんの民俗学は「陰陽五行」という古代中国から入ってきた考え方で、日本の古い祭りや風習、伝説などを解き明かそうというのだった。例えば節分の鬼は「隠(おん)」がなまったもので陰陽の「陰」に通じる。冬の間の寒気や病気などの陰気を鬼として追い出す風習が生まれた。

 ▼本の表題になったカミナリは自然の「五気」のうち振動などを示す「木気」にあたる。これに対してヘソは物の中央を表す「土気」だ。ところが「木気」と「土気」は敵対関係にあると考えられていたから、昔の人もカミナリがヘソを狙うと思いついたのだという。

 ▼むろんすべてを「陰陽五行」で解明することには、学界から批判もあったらしい。あくまで「在野」であり「主流」ではなかった。しかし「ダルマはなぜ赤いのか」「カッパの頭にはなぜ皿があるのか」など、素朴な「なぜ」に挑みつづける姿勢は人をひきつけた。

 ▼小欄もかつて吉野さんの著書から「鬼」に関する部分を引用させてもらったことがある。人づてだったが、丁寧な感想をいただいた。「古い日本」にこだわる者にとっては、もっともっと多くの「なぜ」に答えてほしかった気がする。

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