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【逸品の美学】セントジェームスの「ウエッソン」
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シーズン不問、衣の原点
4月○日、晴れ。春。朝の窓の外には柔らかな陽光があふれ、去年より早足の桜が、もう花びらをふりまく。重苦しい上着はいらない。クローゼットから引っぱり出したのはセントジェームスのボーダーシャツ。正直にいえば、秋冬はインナーに、春夏はアウターに、結局シーズンを問わず着ているのだけれども。
ブランド名の由来は、フランス・ノルマンディー地方の町の名前。タグには世界遺産、モン・サンミッシェルと、カモメ、波が描かれる。100年以上、地域密着型完全フランスメード。定番の「ウェッソン」は「ノルマンディー地方の漁師の第2の皮膚」といわれるほどだ。
東京・代官山のショップは色にあふれる。店内を見渡していると、ボーダーシャツ姿で写真に収まったパブロ・ピカソと目が合った。
セントジェームスの輸入元、コニーアイランドの細貝裕子さんが棚のシャツを数えてくれた。「いまは50パターンくらいあります」。これだけあれば、その日の気分だって、季節感だって受け止めてくれるが、やっぱり基本の組み合わせはエクル(生成)・マリン(紺)。クロード・モネが優しく、ギュスタフ・クールベが雄々しく描いたノルマンディーの海が、ボーダーを織りなす糸のなかに封じ込められたよう。細貝さんは言う。「清潔感があって、流行に左右されない。上品で、年齢も問いませんし、衣食住の衣の原点を思わせます」
工場で糸を染める過程を「お風呂に入れる」と呼ぶそうだ。色に応じてその“入浴時間”を変える。時代を超えた定番を支えるのは、そんな細やかな愛情と、丹念な仕事なんだろう。(酒井潤)