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【戯言戯画】奥菜恵 魔性…いいえ、大人の女
魔性が好きだ。たぶらかされたいという意味じゃなく。その陰影、やるせない感じ、どうしようもなさが。
オキナっておじいちゃんみたいな名前やなぁ…とベタなことを思ったのはいつごろだったか(←翁違い)。清純派アイドルも、いつしか“魔性の女”と呼ばれるように。昨夏以降は引退扱いされてたみたいだけど、8日にエッセー集『紅い棘(とげ)』(双葉社)を出版して、久々に話題を提供してくれた。
週刊誌が「衝撃的エロス」「赤裸々に告白」なんて騒ぐから、うっかり買っちゃったじゃないの。セルフポートレートも載っていて、妖艶な和服姿、タトゥーの入った背中…たしかになかなか扇情的。
でも、文章は「赤裸々」というより「率直」と評するほうがしっくりする。揺れ動く心に正面から向き合い、自分の言葉を紡いでいく。「表現者でありたい」という力強い独白にたどり着くまでの葛藤(かっとう)がよく伝わってくる。
「私は闇から生まれ闇へと還る」って一文にはグッときた。女優という仕事は「陽炎(かげろう)のようなもの」「儚(はかな)いといえば儚い」と彼女はつづる。けれど、時の流れの中で、儚くないものなど、どこにもない。無常のいまを生きることへの、おおらかな肯定に、思わず共感。
うーむ。なんだ、魔性の女じゃなく、大人の女だったか。魔性好きとしてはちょっと残念だけど、この人の芝居は一度観てみようかな。(篠原知存)