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【正論】論語熱は「ブーム」にあらず 大阪大学名誉教授・加地伸行 (1/3ページ)
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ハウツーものと違う
3月10日付本欄に筑波大学大学院教授、古田博司氏が「論語ブームとギョーザ事件」と題する論説を寄せている。その目的は、毒入りギョーザ事件をめぐる現代中国大陸の非道徳性を批難することにあり、大筋は同感である。だが、その議論の展開については疑問があるので、その内のいくつかを述べる。
まず第一点は、今日『論語』がベストセラーとなり、一種の『論語』ブームに在るとする認識である。
『論語』は現代にだけ読まれているわけではない。奈良朝以来、ずっと最もよく読まれて今日に至っているのであり、一時的なものではない。いわば、儒教文化圏(中国・朝鮮半島・日本等)における息の長いベストセラーなのであって、今日の現象と限定するのは正しくない。
第二点。『論語』は「紀元前の孔子とその教団の教えであり、21世紀の日本に直接もってくるには絶対的な無理がある」という古田氏の主張は、古典に対する偏見である。
われわれは、人間が長い年月をかけて読み継ぎ、残してきたものを古典とし、その古典の〈智恵〉を学ぼうとするのであって、古典を〈知識〉やハウツーものとして学ぶわけではない。まして21世紀の日本の現実そのものへの直接適用などをするためではない。日本の現実に対して、古典という人間の智恵(真理と言ってもよい)を踏んで、大所高所から観(み)るところに意味があるのである。
現代に直接適用は無理
欧米人の場合、その古典の代表はギリシャ神話であり旧新約両聖書であろう。彼らもまた人間の智恵として古典を読み学び続けてきたのである。古代ギリシャや古代中近東の話をハウツーもの(知識)として現代に直接適用しようなどとは思ってもいないであろう。

