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【往復エッセー】脳あるヒト心ある人 普遍性を主張する文化 解剖学者・養老孟司さんから作家・角田光代さんへ (1/2ページ)

2008.3.3 08:18

 最近、世界中の事情がわかるみたいにいわれるけれども、私はあまり信用していない。たとえばアメリカは広すぎて、どう考えたらいいか、よくわからない。それは中国も同じである。

 ただはっきりしていることがある。それはその国に個人的な友人がいるかどうか、である。私はアメリカや中国に友人がほとんどいない。ドイツ、オーストラリア、イギリス、ロシアの人なら、なぜか知っている。家まで行ったこともあるし、泊まったこともないではない。

 秋にはバンコクに行き、大学時代の同級生と食事をした。暮れにはブータンの人が来て、一緒に東北へ旅行した。つい先ごろは、東京に住んでいるイギリス人の家に招かれた。お茶席で、ご本人が羽織袴でお茶をたててくださった。

 やっぱり好みがあるのかもしれない。あまり仲良くなれない人たちがある。1つはイスラム圏の人。たとえば大学では、イランの留学生を預かって面倒を見ていたが、意見が合わない。台湾の人ならなんの問題もない。ほとんど日本人である。東南アジアでも、仏教圏の人ならあまり疲れない。

 自分のそういう態度を反省すると、要するに原理原則が嫌いなのである。相手の人の考えがわからないなら、放っておこう。私ならそう思う。ところがそこで「こうしなくちゃダメ」と頑張る文化がある。よくいえば普遍性を主張するのだが、悪くいえば余計なお世話である。イスラム圏や、アメリカ、中国には、その傾向が強い。そんな気がする。私はそれが気に入らない。単に自分の好みだから、その好みを他人に押し付ける気はもちろんない。

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