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【パーティー鑑賞】宮部みゆき「親はいまだに『本は出るのか』と心配」 (3/3ページ)

2008.2.11 14:50
宮部みゆきさん宮部みゆきさん

 もう一つすごく、ああうまいなあ、と思ったのは、主人公がいよいよ出ていこうというときに、近くの親戚(しんせき)の家までおりていくと意外に近かった。すごく遠い異界だと思っていたのに意外と近かった、というところを、さらっと書いてあるんです。なかなか書けないな、と思った。大変感じ入りました。そういう書き方は才能で、書いたのではなくて、井口さんが考えて考えて考えて書いたから、そういう作品になったんだと思います。

 才能とかひらめきは株みたいなものです。当たればでかいし、一挙に何千倍にもなりますが、消えるときはあっという間に消えます。でも努力はこつこつ考える日掛け貯金ですから、決してなくなりません。そのことを、井口さんは理屈ではなくわかっているからだなと思いました。

 一人きりの選考委員ですから、相談相手がいなくて、正直いってちょっと不安でした。私が太鼓判を押して送り出した方が、あとで、あのときあんなふうに褒められて賞なんてもらわなくてよかった、と後悔する日が来たら、悲しいなというプレッシャーも感じたんですが、『月のころはさらなり』という作品をひっさげて登場された井口さんを送り出すのは、そんな不安はないと思っています。ぜひ温かく見守って、井口さんの次の作品、その次の作品を、皆様に力を借りて育てていただきたいと思います。

 私は同業者としては、キャリアと年は上ですが、負けないようにがんばりたいと思いますし、一読者として、これからどういう仕事をなさるか、楽しみに待ちたいと思います。

 最後になりますが、今日ご家族の皆様がお見えですので。

 私、井口さんより一世代上で、私の親は戦前生まれで、尋常高等小学校しか出てないんですが、それが今も健在なのですが、私、モノ書き生活20周年。いまだに心配しています。いまだに、今年は本は出るのかとか、おまえの仕事はあるのか、と心配しています。私以上に作家生活が長い大沢在昌さんのお母さんは、ときどき会社に電話をかけてきて、社員の給料を払えるのかとお聞きになさっているそうです。それぐらい心配するのがご家族だとは百も承知ですが、あまりたくさんご心配なさらないように。井口さんが無理しているのだったら、そんなに根をつめないでと一声かけていただければ大丈夫だと思います。井口さんはしっかりやっていける方だと思うので、ご安心ください。

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宮部みゆきさん
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