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【産経抄】2月10日
このニュースのトピックス:歴史・考古学
人の祖先が木(植物)と石のうち木を選んだため、その命がはかないものとなった。日本の木花開耶姫(このはなのさくやびめ)の話をはじめ世界の神話に共通するテーマである。人類が早くから木と石との異なる特性に注目し、使い分けてきたことを示している気がする。
▼内部が公表された奈良県明日香村の真弓鑵子(かんす)塚古墳の横穴式石室も日本の石造技術の高さを証明した。蘇我馬子の墓とされ、観光スポットにもなっている石舞台古墳をしのぐ国内最大級の広さだという。それだけでなく石を巧みに積み上げ、巨大なドームを築いていたのだ。
▼しかも古墳が造られたのは、昨年、壁画保存のため石室が解体された高松塚古墳や、石舞台古墳よりもずっと古い6世紀中ごろである。木の技術が強調されがちな日本で、石の技術も早くから発達していた。そのことは改めて見直されてもいいことだろう。
▼そうした技術は綿々と受け継がれ、芸術的ともいえる城の石垣や石庭などを築いてきた。高松塚古墳の石室解体でも現代の石工たちが見事な腕前で難作業を乗り切った。そしてその技術陣がこんどは、カンボジアで石造遺跡の修復に当たることになったという。
▼世界遺産のアンコール遺跡群のひとつ、西トップ寺院という建物だ。遺跡群はジャングルの中に咲いた「石の文化」といえるが、皮肉にもそのジャングルの木の根が寺院に侵入、石材が崩れ寺院は崩壊の危機にある。それをいったん解体し、積み直すのだそうだ。
▼作業に使うクレーン車は高松塚解体で特殊機器を開発したメーカーが無償提供する。作業に当たった石工たちも参加する予定である。日本の石の技術がアジアの文化財を救いその絆(きずな)が強まることになれば、古代の石工たちも本望というものである。