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【産経抄】1月17日
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川でおぼれていたヒバリの子を助けたウサギのホモイは、ヒバリの王から「貝の火」と呼ばれる宝珠を贈られる。その玉は、「赤や黄の焔(ほのお)をあげて、せわしくせわしく燃えているように見えますが、実はやはり冷たく美しく澄んでいるのです」。
▼童話『貝の火』のなかで、宮沢賢治は、火の形、色、勢いを決めているのは、それを見るものの心のありようであることを示した。ずるいキツネにだまされたホモイが、森の動物たちをいじめるようになると、玉に映る炎はみるみる色あせていった。やがて玉は砕け、ホモイの目は白くにごり、見えなくなってしまう。
▼今年の歌会始のお題は「火」だった。入選者のなかで、大阪市の中学生、宮川寛規(ひろき)さんの歌が、まず目に留まった。「火の中にかすかに見えるものがあるそれはいつもとちがふ風景」。15歳の澄み切った目が、どんな風景を炎の中から切り取ったのか、小欄も見てみたい。瑞々(みずみず)しい感性に打たれた。
▼どれほど花火が美しくても、「きれいだね」と言い合える人がいないとつまらない。「一人見る花火はさびしいものだよと赴任の地から父は電話す」。やはり中学生の佐賀県の田中雅邦さん(14)は、単身赴任の父親がもらした一言をあざやかにすくい取っていた。
▼かつての日本では、家の中央の間には炉が切ってあり、家族はそこで火を囲んで食事をし、語り合った。古来、人に計り知れない恩恵をもたらし、家族団欒(だんらん)の象徴でもあった火が、ときに凶暴な牙をむき出すことがある。
▼13年前のきょう、神戸とその周辺の地域を激しく揺さぶった大地震は、紅蓮(ぐれん)の炎を噴き上げ、大勢の家族を生と死に引き裂いた。炎を見るたびに、悲しい記憶が蘇(よみがえ)る人々のことを忘れてはならない。