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【断 二宮清純】ルーキーを成功させるには
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50メートルを何秒で走るか、遠投の記録はどのくらいか。この程度のデータなら、パソコンのキーを叩(たた)けばすぐに出てくる。しかし、視機能に関するデータはなかなか出てこない。出てきたとしても1・5とか2・0と表示される静止視力くらいのもので、動体視力(動く物を見る能力)や深視力(立体感や遠近感を認識する能力)に関するデータは皆無といっていい。
だが、プロ野球のルーキー野手が成功する上で視機能は走力や遠投力に勝るとも劣らない重要な要素のひとつである。どんなに足が速くても肩が強くとも、あるいはプロレスラーなみの体力を誇っていても、ピッチャーの投じる快速球や鋭い変化球をバットの芯(しん)でとらえることができなければ、野手は仕事にならない。スランプに陥った時、打撃コーチはまずフォームをいじろうとするが、最大の原因が視機能にある場合、それは無駄な努力に終わってしまう可能性が高い。
メジャーリーグ“最後”の4割打者テッド・ウィリアムスにはこんなエピソードが残っている。彼がワシントン・セネタースの監督をしていた時のことだ。何を思ったのか、バットの胴の部分に松ヤニを塗っておもむろに打席に入った。投手には豪速球を投げるルーキーを指名し、センター方向へ弾丸ライナーの打球を放つなり、ウィリアムスは叫んだ。「縫い目の5ミリ上に松ヤニがついているはずだ」。果たして、ウィリアムスの言ったとおりだった。
近年、視機能の重要性に対する認識は徐々にこの国のプロ野球においても深まってきたが、まだまだ十分とは言えない。キャンプ取材ではその点にも目を光らせておきたい。(スポーツジャーナリスト)