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【芥川賞講評】「声のあるような文体」 池澤夏樹氏 (1/2ページ)

2008.1.16 20:44

 第138回芥川賞について選考委員の池澤夏樹氏は16日、以下のように講評した。

 まず最初の選考で田中(慎弥)さん、中山(智幸)さんが落選した。その後、津村(記久子)さん、西村(賢太)さん、山崎(ナオコーラ)さんが選外に。川上(未映子)さんと楊(逸)さんが残り、議論が展開された。2度目の投票で楊さんが3点、川上さんが6点を獲得し、川上さんが文句なしの受賞となった。

 川上さんは声のあるような文体で書く。目で読んでいて声が響くようだ。口語的な大阪弁が繰り出され、味がついていて、なめらか。それなのに抑制がきいていて、巧みな構築がなされている。短編としての構造が計算されつくされていて、あざといほど。しかし、その企みが成功している。

 (受賞作『乳と卵』の)登場人物は、娘と母、娘の叔母の3人だけだが、東京で2、3日を過ごすうちにドラマが起きる。娘は母と口をきかないのだが、これも現代の壊れた家族を象徴しているようだ。物語の中で、母は豊胸手術をしたいという考えに凝り固まっている。一方で、娘は心の中で体のことをいつも考えている。身体論が前に出ていて、どういう風になるのだろうと読み手は思うのだが、娘は実は母をとても心配している。ドラマチックな場面で、2人は口をきくようになる。最後に大阪に帰るわけだが、ここにカタルシスが漂う。上手に構築されている。

 ただ、男性の選考委員の中には、女性はいつも生理的なことを考えているのだろうか−と疑問の声もあった。

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