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【正論】新しい年へ 「明治の精神」に立ちかえろう 文芸批評家、都留文科大学教授・新保祐司 (1/3ページ)

2008.1.1 01:55
このニュースのトピックス第23回正論大賞

維新から140年、時代超え流れるもの

 ≪昭和30年代ノスタルジー≫

 今年、平成20(2008)年は、明治維新140年の節目の年にあたる。

 俳人中村草田男が、「降る雪や明治は遠くなりにけり」という人口に膾炙(かいしゃ)した句を詠んだのは昭和10年頃である。それから70年ほどたった今日では、明治はさらに遠くなってしまったのかもしれない。

 平成も20年となり、昭和も遠くなった。今や、降る雪や昭和は遠くなりにけり、といったところであろう。現に昭和30年代ブームが起きている。

 この時代が懐かしがられるのも、その頃までのこっていた「日本」というものが、その後の激変の中で消えていってしまったからである。しかし、今日の日本の深刻な危機を考えるとき、そのようなノスタルジーでは対処できない。

 ここはやはり、昭和を越えて「明治の精神」にまで立ちかえってみる必要があるのではないか。

 「明治の精神」といういい方は、夏目漱石の『こころ』の中に出てくる。明治天皇の崩御に際して、「先生」は「その時私は明治の精神が天皇に始まって天皇に終わったような気がしました」という。そして「自分が殉死するならば、明治の精神に殉死する積りだ」と妻に語る。

 崩御の1カ月後、乃木大将の殉死を知る。そして、その死に深い共感を抱いて、ついに「先生」も自殺するに至るのだが、こういうところに「明治の精神」を代表する人間の一人、漱石の精神の悲劇的な相貌(そうぼう)がくっきり浮かび上がっている。

 ≪乃木大将と内村鑑三≫

 ここで乃木大将との関連において「明治の精神」が出てくることは大事な点であり、小林秀雄は「歴史と文学」(昭和16年)の中でスタンレイ・ウォッシュバアンが書いた乃木将軍についての本に触れて「僕は乃木将軍という人は、内村鑑三などと同じ性質の、明治が生んだ一番純粋な痛烈な理想家の典型だと思っています」と書いた。

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