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【週末読む、観る】書くことで見えてくる 詩人、蜂飼耳 (1/2ページ)
このニュースのトピックス:第23回正論大賞
もう年末なのかと、大晦日(おおみそか)がめぐり来るたびに思う。日に日を重ねていけば、月は過ぎ、師走に至り、やがて大晦日。当たり前のことなのに、もう最後の日なのかと、ぼんやりする。日付が変われば新しい年。目の前の砂時計を、はやく引っくり返してしまいたい。大晦日、あたりを流れる空気にはそんな気分が混ざっている。
今年の世相を表す文字は「偽」だという。テレビの画面は、京都・清水寺のお坊さんの握った筆が「偽」の字を黒々と描き出すところを映した。食品関連の偽装事件が相次いだことなども、この一文字に反映されているというが、「偽」といわれれば、反対に「真」という語も思い浮かぶ。「真」とは結局どういうことなのだろう。
「真」に至るルートなどというものが、あるのかどうかは、よくわからない。けれど、それに近いおこないは、あると思う。読書だ。昨今は、本を読むことを、ただの余暇だと感じている人も多いようだ。だが、そうではないだろう。他人の書き表した言葉、思考や感情と向かい合うことは、なににも増して大事なことだ。ひとり静かに、書かれた言葉を受け取る時間が、人の内側を耕し、養う。そういうおこないを軽んじ怠っては、人はなんのためになにをしているのか、だんだんと見えなくなっていくだろう。

