MSN Japanのニュースサイトへようこそ。ここはニュース記事全文ページです。

ニュース:文化 皇室学術アートブックス囲碁将棋写真RSS feed

【旬の民俗学】霜枯れ 農村に思いはせ

2007.12.26 08:12
このニュースのトピックス第23回正論大賞
霜で白く輝く芝生をはむシカ。霜枯れの季節、農村は農閑期を迎える=奈良市の奈良公園 霜で白く輝く芝生をはむシカ。霜枯れの季節、農村は農閑期を迎える=奈良市の奈良公園 

 11月を「霜月」という。これは、旧暦(陰暦)にしたがってのことだから、現行の暦では1カ月ほどずれることになる。

 旧暦の10、11、12月を「霜枯れ三月(みつき)」ともいった。太陽光線が弱まり、万物の生命力が低下する。とくに、植物の生命力が低下する。霜をかぶると、一夜にして、しおれて枯れる植物は少なくない。したがって、それまでに稲を刈りとらなくてはならないし、サトイモやサツマイモ、ダイコンなども掘りだしておかなくてはならない。多くの農家では、それをすませた「霜枯れ三月」が農閑期となるのである。

 農村での最大の行事が「霜月まつり」であるのも、農作業の多忙期を過ごした直後を選んでのことであった。しかし、日本の農業を一元化して語ってはならない。日本列島は、南北3000キロ以上にわたる。南北の距離だけからすると、アメリカや中国のそれに匹敵する。降霜のはじめも、西南日本と東北日本では1カ月もの違いがある。そればかりか、薩南諸島や沖縄諸島のように霜の降らない地方もあるのだ。

 沖縄の島々で、「漁(あさ)る」という言葉にでくわして驚いたことがある。必要に応じてサツマイモを掘りだすことを、漁るというのである。霜が降らないから芋蔓(づる)が枯れることがない。1年でも2年でも芋をつける間はそのままにしておけばよい。一度に芋を掘りだす必然はなく、いうなれば畑を貯蔵庫にしておけばよいのだ。鍬(くわ)で掘ることもない。鉄製の串(くし)か箆(へら)で間にあう。この簡単な芋掘り具を、たしかアサンガニ(漁り鉄具)といっていた。

 そのときから、日本の伝統的な農業形態は、まず有霜地帯と無霜地帯に分けて考えるべきであろう、と思うようになった。実際に農業に携わってみるとわかるが、霜は旱魃(かんばつ)とともに根こそぎの災害をもたらす。その意味では恐ろしく、いかんとも抗しがたい気象なのだ。

 現在、日本人の多くが農業に無関心を装っている。それは、いたしかたないとしても、時折にその時期の農村の風景を思いうかべるぐらいはしたいもの。いま、まさに霜枯れがはじまっているのである。(民俗学者・神崎宣武)

このニュースの写真

霜で白く輝く芝生をはむシカ。霜枯れの季節、農村は農閑期を迎える=奈良市の奈良公園 
PR
PR

PR

イザ!SANSPO.COMZAKZAKFuji Sankei BusinessiSANKEI EXPRESS
Copyright 2008 The Sankei Shimbun & Sankei Digital
このページ上に表示されるニュースの見出しおよび記事内容、あるいはリンク先の記事内容は MSN およびマイクロソフトの見解を反映するものではありません。
掲載されている記事・写真などコンテンツの無断転載を禁じます。