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【断 神田茜】命を食べている
このニュースのトピックス:第23回正論大賞
年末は街のあちこちで食べ物が目につき、食欲が増す時期だ。
今年は大食いが流行(はや)り、テレビの中では出演者が「食べている」場面をよく目にした。自分もそれを見て「美味(おい)しそうだな」「あの店に行ってみよう」と思う。そう思いつつ、人間の食欲はいったいどこまでふくらんでいくのだろう、果てしなく食べ続けるモンスターになりはしないかと空恐ろしくなることもある。
そんな漠然とした不安を感じながら話題の映画『いのちの食べかた』を観(み)た。われわれが日々食べている牛、豚、鳥、などの家畜、野菜や果物がどのように食料となるかを追ったドキュメンタリー映画だ。
驚くことに絵画のように美しい映像の数々は、広大なひまわり畑に飛行機で薬を散布するようす。大きな掃除機のようなホースで集められるブロイラー。機械に吊(つ)るされて並んでいる膨大な数の豚。
人工授精で増殖、改良された家畜はまるでおもちゃ工場のようにオートメーション化されたところで、不思議な機械を使いあっという間に食肉にされていく。残酷であるとか、かわいそうなどとは考える余地もないほど無機質で、そこに命というものを感じさせないような仕組みになっていた。そして改めて今日食べたハンバーガーに、命を感じただろうか…と考えてみると、何も考えていなかったことに気付いて、自分自身も効率性、低コストしか考えていない「食べる機械」になってしまったような気がして愕然(がくぜん)とする。
命の貴重さを感じなければ、いくら食べても満足できないのは当然なのかもしれない。今、わずかでも感じる、生き物を食べる後ろめたい感覚を、忘れてはいけないと、切実に思う。(講談師)
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