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【ぶっちゃけインタビュー】総合地球環境学研究所副所長 秋道智彌さん
京都もここ(上賀茂)まで来ると静かでしょ。サルや時にクマも出るんです。ここ、里山の山すそに建てられた馬蹄(ばてい)形の和風建築(地下1階、地上2階)が、総合地球環境学研究所(地球研)です。
創設は平成13(2001)年。大阪にある国立民族学博物館(民博)などと同じようにどの大学でも利用できる研究機関です。当初は京大に間借りしてましたが、一昨年2月、この地に越してきました。
研究者はいるのに個人研究室がまったくない。仕切りのない建物なんですよ。
民博に25年間勤務しましたが、研究室は個室でした。ところが個室だとほかの研究者とコミュニケーションが取りにくい。研究を円滑に進めるには毎日、顔を合わせる方がいい。その方が自然だと思います。初代所長の日高敏隆先生の発案です。
地球研はその名の通り地球環境問題の本質を明らかにし、人間と自然のよりよいありようを提示する機関です。地球的規模での深刻な温暖化や水資源の枯渇など諸問題の解決策を探るため、哲学や歴史学、考古学といった文系の学問と生態学や植物学など理系の学問の両面から総合的にアプローチしています。
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地球環境問題の根源は人間の文化の問題だと考えています。ですから人間の生き方を問いかける取り組みについて、国内外の研究者と実地調査を行います。
いま15のプロジェクトが進行中で、それぞれ7年間かけて結果を出していく方法をとっています。かかわる研究者は外部を含めると約1000人。教授や准教授、助教ともに任期制をとっています。もちろん各プロジェクトの研究員も同様。1つのプロジェクトが終了すると任期も終える仕組みです。この方が研究に柔軟に対応できるんです。
これまで水の循環や気候、海洋、地下環境、食料生産システム、景観など幅広いテーマに取り組んできました。身近なものでは、例えばトウモロコシ。日本はアメリカから大量に輸入している。これを育てるのに、アメリカではどれだけの地下水をくみ上げているか、大半の日本人は知らないでしょうね。くみ上げ過ぎて大地が陥没したところもある。つまり日本はトウモロコシだけでなく水も輸入していることになります。世界一の水輸入国なんですよ。
トウモロコシがクリーンエネルギーとして注目されています。アメリカではトウモロコシの値段が上がってきたので作付面積が増えてきた。その分、小麦が減っている。日本が輸入する小麦の値段は高くなります。パンやたこ焼きの値段にはね返ってくるわけです。家計を直撃しますよね。こういう“つながり”を考える必要があると思う。
こうした地球規模の問題は子供のころから知っておくべきだと思います。地球研では近くの小学校へ研究の出前も行ってます。
いま、僕のプロジェクトは最終段階を迎えています。アジア熱帯地域における地域生態史をテーマに、メコン川流域の森林や農村を4年間調査してきました。中国、タイ、ラオスを流れる全長6000キロに及ぶ川の流域を対象に、過去60年にわたって、人々の生業や食と健康、資源管理と保全をテーマにその暮らしを明らかにする試みです。
成果の一端として『図録メコンの世界−歴史と生態』(弘文堂)を出版しました。また、収集した農具や漁具、衣服などの資料を展示する「モチゴメの国ラオス」展を天理参考館(奈良県天理市)で来年1月7日まで開いています。今後も地域から地球全体を考える研究、調査を地道に進めていくつもりです。
■あきみち・ともや 昭和21年、京都市生まれ。京都大学大学院修士課程修了。東京大学大学院博士課程単位修得。専攻は生態人類学。国立民族学博物館教授を経て今年5月から現職。著書に『なわばりの文化史』『コモンズの人類学』、編著に『森はだれのものか』『水と世界遺産』など。
【after記者NOTE】 京大と東大の両方で学んだ研究者と聞くと、いかにもガリ勉タイプをイメージする。しかし、秋道さんにそんな雰囲気はない。テレビのワイドショーや芸能情報にも詳しいのだ。そんな柔軟な姿勢が、異文化の中におけるデリケートな調査を円滑に進める原動力にもなっているのだろう。

