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【断 中条省平】ケータイは甘えと暴力の道具
このニュースのトピックス:第23回正論大賞
都市の歴史を論じる中野隆生氏によれば、都市空間には、物質的、観念的、非物質的という3つの形があるとのことです(『都市空間と民衆 日本とフランス』)。
くだいていえば、物質的な形とは、建築物が集まって広がっている状態のことであり、観念的な形とは、都市の表象、つまり、私たちが東京とかパリとかいう名前を聞いて思い浮かべるイメージ総体のことでしょう。
ただ、都市計画の設計図などは、物質的な空間を決定する基礎でありながら、建築家や官僚の頭のなかに浮かんだイメージにすぎないという点では、観念的なものです。つまり、簡単には、都市空間の物質性と観念性を分けてしまうことはできないのです。
それでは、第3の特徴である非物質的な空間とは何でしょうか? これは言い換えれば「情報的空間」ということになるでしょう。つまり、ケータイ、メール、ネットという、21世紀の3種の神器によって保証される人類史上未曾有(みぞう)の空間です。これは、都市と農村といった空間の古典的な区別を無効にする空間革命のツールでもあります。
ケータイは都市空間だけでなく、人間関係も大きく変えつつあります。
先ごろ、内閣府が発表した調査では、電話やメールにすぐ返信しないと怒られるとか、1日に何度もケータイやメールで行動報告を命じられるといった新たなDV(夫婦や恋人間の暴力)の例が報告されています。
では、なぜケータイやメールを手放さないのか? それがいつでも相手に寄りかかれる甘えの道具でもあるからです。相手への甘えと暴力を同時に可能にする道具。この恐るべきツールが人間関係という空間をも変えようとしています。(学習院大学教授)