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【主張】人工万能細胞 日本発の再生医療研究だ

2007.11.22 03:42

 画期的な再生医療技術の基礎が開発された。しかも日本人研究者の手によって。

 「ヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)」の樹立である。人間に使える新たな“万能細胞”の登場だ。称賛の拍手を送りたい。

 その何がすごいのか。脊髄(せきずい)損傷や心不全の患者を細胞移植で治療できるようになる可能性が一気に現実味を帯びてきたからだ。医師と患者とその家族の夢だった。しかも、用いるのは、患者自身の皮膚の細胞だけである。

 これまでのES細胞(胚(はい)性幹細胞)も、あらゆる組織の細胞に分化する万能性を持っている。しかし、医療に使うにはヒトの卵子を使い、生命の始まりである胚を壊してつくるという倫理上の問題も実用化に向けての大きな障壁になっていた。

 京大再生医科学研究所の山中伸弥教授らは、ヒトの皮膚細胞に4種類の遺伝子を導入することで、ヒトES細胞とそっくりな性質を備えたiPS細胞に変身させたのだ。細胞の形や分化能力、増殖力も同等であるという。

 研究チームは、大人の皮膚細胞から作ったiPS細胞が神経や筋肉、軟骨などに分化することを確かめ、拍動する心筋細胞も実現させている。

 患者自身の細胞を使うので、拒絶反応のない移植手術が可能になる。これは移植医療の理想である。

 ES細胞を拒絶反応のない移植に使うには、ヒトのクローン胚をつくる必要があった。このヒトクローンES細胞は技術的にも非常に難しく、世界に成功例はない。

 韓国ソウル大学の黄禹錫(ファンウソク)・元教授らが名誉を求めて論文を捏造(ねつぞう)し、成功を装った事件では、世界中の脊髄損傷患者らが落胆させられた経緯がある。

 iPS細胞は、卵子の問題をはじめ、胚の破壊や拒絶反応の難関も一挙に克服してしまった。山中教授らは昨年、マウスでの実験で成功しており、米国や欧州でもヒトでの実現を目指して研究が進められていた。

 米国ではES細胞の倫理性が再生医療研究の壁となっていたが、iPS細胞の樹立で大きく前進する。ブッシュ大統領も歓迎している。臨床への応用には安全性の確認などが必要だが、大きな突破口が開かれた。クローン羊ドリーの出現にも匹敵する驚きだ。

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