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【サブカルさーふぃん】マンガ 『キーチ!!』
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■闇を生む光への希求
新井英樹の漫画はささくれだっている。世の中の自明の倫理や社会性を疑っている。それどころか個人の善意や理性の中にも、社会の欺瞞(ぎまん)を見つけ出し、爪楊枝(つまようじ)で突くようにわれわれの弱さをほじくり出す。だから決して読みやすくはない。むしろ「イタイ」漫画だ。
だが、そこにハマると抜け出せない魅力がある。
いま「ビッグコミック スペリオール」で第2部が連載中の『キーチ!!』もそうだ。母親が沖縄の巫女(みこ)の占いで出産の日を決め、帝王切開で生まれた子ども・輝一の数奇な運命。社会の決め事も隔てる壁もいらず、名前の通り、輝く太陽の下に立つ唯一無二の己をただ肯定する少年。シンプルなまでの強い光への希求は、その分、函数(かんすう)的に闇を生み出す。それは死の世界だ。むしろ光を希求すればするほど、この社会や人間そのものの闇に向き合うことになる。
彼が両親を通り魔に殺された事件は9・11テロ報道の片隅に載った。そしてわが子を過失で死なせてしまったホームレスの中年女に拾われて育てられたかと思えばふたたび遺棄され、小学生になってからは級友の少女に売春を強要する大人への怒りが、より大きな権力との戦いに広がり、国会議事堂を前にした拳銃(けんじゅう)騒ぎに発展する。
彼の両親が出会った原点である光の島沖縄は直接描かれず、長野や熱海といったどこにでもある町の風情が「美しい日本」とは裏腹な、中で生きている「どうしようもない」人間たちの生活が描かれる。所謂(いわゆる)「美少女」「美人」キャラは出てこない。一目では情報を読み取れない描き込まれた絵が何度もその世界に呼び込んでくれる。(評論家・切通理作)