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【断 大月隆寛】クロウトの世界がおかしい
このニュースのトピックス:沢尻エリカ
シロウトとクロウトの間の垣根がなしくずしになくなっています。生身としてはろくでなし、とても普通の暮らしに適応できない、でも何か取りえはある人間を世間にさらし、その取りえで世渡りさせる稼業。うっかりと不特定多数に「見られる」自分は当然、カタギと別物にならざるを得ないわけで、そんな常ならぬ自意識の人間をうまく飼い慣らし、制御することも含めてが全部クロウトの世渡りの領分。「芸人」とは、そして彼らの生きるクロウトの世界とは、かつて正しくそんなもの、でした。
なのに最近、様子がおかしい。たとえば、このところメディアを騒がせている沢尻エリカの「素行」をめぐる騒動。芸能界の一部に「こいつはもうシメよう」という動きもあったようですが、でも、「芸人」本人の勘違いや思い上がりは茶飯事のはずで、それを内輪で制御できぬままズルズル野放し、のっぴきならぬ事件になって世間の声が大きくなると初めて良識ぶって同調、安心して制裁を加える、という始末。「シメる」にせよ、どうして自前でなくそんな世間の“お墨つき”を後ろ盾にしか動けなくなったのか。シロウト衆にゃ舞台裏は見せられねえ、というクロウトとしての誇りなど、どこにもありません。
思えばこれって、生徒や学生を制御できない教員たちというクロウト衆が事態を放置している学校の退廃とも相似形のような。沢尻エリカにゃ何の思い入れもないんですが、でも、あのふてくされ具合が、正しく世間に構われたことのないまま「自由」に幽閉されている、いまどきの若い衆のそれと重なってみえたのは、単なるあたしの思い込み、なんでしょうかねえ。(民俗学者)