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ストライプには大きな力 世界文化賞・絵画部門 ダニエル・ビュレン

2007.10.9 08:13
このニュースのトピックス美術
ダニエル・ビュレンダニエル・ビュレン

 パリの観光名所パレ・ロワイヤル。ルーブル美術館のすぐ近くにあるこの中庭に、黒と白のストライプが印象的な円柱群「2つの台地」が並んでいる。1986年の設置当時、景観を壊すとして論争を起こした有名な作品である。作者のダニエル・ビュレンは「視覚の道具」と呼ぶストライプを一貫して使い、このように問題作、話題作を数多く発表してきた。「ストライプは視覚的に非常に大きな力を持っている」。そして、音楽家にとっての使い慣れた楽器のような存在なのだという。(堀晃和)

 黒い上着に黒いベスト、そして黒いズボン。ビュレンは、パリ近郊のヴァル・ド・マルヌ現代美術館に、黒ずくめの姿で現れた。作品を制作しているときは白の作業服が多いはず。「きょうは黒なのですね」と話を向けると、「イメージを変えるためです」と柔和な笑顔がかえってきた。

 インタビューは、美術館に展示された自作の前。“解体された小屋”をモチーフに複数の壁で構成された作品で、もちろん、ストライプが描かれている。

 「ストライプは平凡だからこそ面白い。だが、非常に存在感があります。白とほかの色による帯は世界中でみられる。普遍的に使われているのは、視覚的に大きな価値と力を持っているからです」。カンバスに描いたり、布に染めたり、造形物に…。ストライプによって物体や辺りの空間が新たな文脈を見せるというのだ。シンプルながら圧倒的な存在感を持つ“解体された小屋”を見て、そのことを実感した。

 ストライプの魅力に気づいたのは、画家になってまもない1965年ごろ。40年以上も表現手段として使い続けてきたことになる。しかも、その幅は一定して8・7センチ。見つけた布地がこのサイズだったというが、今後もそれは変わらないのだろうか。「音楽家における楽器に少し似ている。ピアニストが途中でハーモニカやバイオリンに変えることはないし、観客もいつもその人のピアノを聴きに行くでしょう? その道具を放棄する理由はないのです」

 その斬新な作品群は、常に美術界に刺激を与えている。当初、物議を醸した作品も、時間を経て評価は一変した。「『2つの台地』は当初、『本当にひどい』といわれたかもしれないけど、待ち合わせ場所になって、今ではいつも人がやってくる。満足だよ」

 同時に、「in situ」(「本来の場所で」の意)という現場制作の姿勢も貫く。展示期間が終わると、ほとんどは撤去される。「美術館に置かれるべき絵画を描くという考えを捨て、外で仕事を始めました。作品はある場所で作られ、そこで人に見られ、たいていの場合は消滅する。芸術作品は、はかないものだと思う」

 活動の範囲は欧米をはじめアジア、オーストラリア、南米にまで及ぶ。特に日本には約200回も訪れたのだという。「日本の『借景』という概念が好き。大きく影響を受けました」。その日本で世界文化賞の授賞式典が行われる。新たなインスピレーションを得て今後も、美術界に新風を送り続けてくれるだろう。

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 世界の優れた芸術家に贈られる高松宮殿下記念世界文化賞(主催・財団法人日本美術協会、総裁・常陸宮殿下)の第19回授賞式典が16日、東京・明治記念館で行われる。式典を前に、受賞者らに作品や芸術活動に対する思いを聞いた。

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【プロフィル】ダニエル・ビュレン

 1938年、パリ生まれ。アトリエを飛び出し、作品が置かれる現場で制作する手法で、一貫してストライプを描き続けている。主な活動に、パリや東京の地下鉄に無断で張られたストライプのポスター(69〜70年)、ニューヨークのグッゲンハイム美術館に掲出された巨大なストライプのパネル(71年)、パリのパレ・ロワイヤルの円柱群「2つの台地」(86年)など。86年に、ヴェネチア・ビエンナーレに仏代表として参加し、金獅子賞を受賞。69歳。

このニュースの写真

ダニエル・ビュレン
パレ・ロワイヤルの中庭に設置された円柱群「2つの台地」(1986年)
東京・台場に設置の「25 Porticos」(1996年)

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