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【主張】裁判員制度 「公の精神」取り戻そう 円滑な運用と検証の徹底を

2009.5.20 03:20
このニュースのトピックス殺人事件

 国民が1審の刑事裁判に参加する「裁判員制度」が21日からスタートする。裁判員は裁判官と対等の立場で有罪か無罪か、量刑をどうするかを決める。国権の一つである司法権の行使に国民が参加して重要な役割を担う。

 わが国司法制度の大転換だ。何よりも円滑な運用が求められる。国民の協力がなければ立ちゆかない。裁判員となる国民の負担軽減にも常に気を配らなくてはならない。こうした点とともに、ともすれば「自己本位」と批判される日本人が「公の精神」を取り戻す好機にしたい。

 これまでの刑事裁判は裁判官、検察官、弁護士という法律専門家だけで行われてきた。法律に素人の国民にとっては審理が難解で、理解しにくいというのが一般的な印象だった。

 裁判の長期化や量刑をめぐり、国民の感覚とズレがあることも指摘されてきた。裁判員制度は、国民の社会常識を広く裁判に反映させるとともに、審理の迅速化を図ることが最大の目的である。

 欧米では制度の違いこそあれ、国民が刑事裁判に参加している。韓国も日本より半年早く「国民参与裁判制度」を取り入れた。

 裁判員制度では、プロの裁判官3人に、くじで選ばれた裁判員6人が加わり、計9人で審理する。対象となる事件は、殺人や強盗致死、放火などの重要事件だが、危険運転致死罪などの交通事故も含まれる。21日以降、検察当局が起訴した事件が裁判員裁判で審理される。初公判が開かれるのは、準備手続きなどを経て7月下旬以降になる見通しだ。

 ≪拙速な審理は本末転倒≫

 裁判員裁判では、公判前に必ず「公判前整理手続き」を行うよう法律で義務付けられている。裁判官、検察官、弁護人の3者が公判で審理される証拠などを事前に絞り込む作業で、審理の迅速化には欠かせない。

 公判が連日開廷されることも審理日程の大幅な短縮につながるだろう。大半の裁判が3〜5日程度で終了すると最高裁は試算している。だが、複雑な殺人事件や、例えば最高裁で被告の死刑が確定した和歌山市のカレー事件のような凶悪、重大事件はとても1週間程度では審理できそうにない。

 公判の迅速化を優先するにしても、拙速な審理は許されない。刑事裁判の大原則は、真相の解明である。迅速化だけに目を奪われると、冤罪(えんざい)を生む要因ともなることを肝に銘じたい。

 証拠が乏しく、被告が否認している事件も、裁判員に難しい判断を迫ることになる。審理が長期化すれば、裁判員の市民生活には大きな支障が生じる。どのように負担を軽くしていくか、裁判員裁判定着への大きな課題である。

 最高裁は、「見て聞いて分かりやすい裁判」をスローガンにしている。法曹3者は裁判員が理解しやすいように、常に心がける必要がある。難解な法律用語は使わずに、懇切丁寧な審理の進め方がこれまで以上に求められよう。

 裁判官は、裁判員が評議の席で自分の意見を述べやすいようにする努力が必要だ。裁判員も臆(おく)することなく、感じたことを堂々と述べればよい。それだけに、裁判官の訴訟指揮の力量も問われる。

 制度スタート後は、徹底した検証作業が欠かせない。裁判員経験者が体験談や審理の感想などを国民に伝えることが、制度をさらに充実させることにつながる。

 ≪学校の授業に組み込め≫

 大改革だけに、さまざまな課題や問題点が浮き彫りとなろう。裁判員法は、施行3年後に見直すと明記している。制度の不備が見つかれば、速やかに対応したい。

 裁判員制度を将来にわたって定着させるには、小学生ぐらいからの教育が重要な役割を担う。制度の意義や仕組みを学校の授業に組み入れていくことを提案したい。裁判員裁判を実際に傍聴するだけでも、理解は深まる。

 米国の多くの州では、中学・高校の公民教育などで陪審制への理解を深めている。陪審員を「よき市民の義務」と位置づけて、陪審員を務めた大人の体験談を聞いたり、教室で模擬裁判を開くなどして実際的に教えている。

 当面は生活や精神面で負担となる面もあるが、一人一人の参加を通じて国民の義務と責任を果たす意義は小さくない。

 裁判員制度への理解と協力を深めることによって、司法分野にとどまらずに、日本人の公共意識をさらに高めていく機会につなげていきたい。

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