ニュース: 事件 RSS feed
【足利事件】視点「過去の事件の精査必要」
有罪の有力な証拠とされたDNA型鑑定は、平成元年に警察庁科学警察研究所(科警研)が国内で初めて実際の事件に使った。4年から各都道府県警にも順次導入され、今では年間約3万件の事件で実施されている。裁判では3年、水戸地裁下妻支部で審理された連続婦女暴行事件の公判で初めて鑑定結果が証拠採用されており、足利事件の最高裁判決は、DNA鑑定の証拠能力を認めた初のケースだった。
現在、最も精度の高い鑑定法では4兆7000億人に1人まで特定できるとされる。ただ足利事件で行われた鑑定法は、導入初期だったこともあって精度がかなり低く、1000人に1人程度だったともいわれる。また当時は、測定器具の不備もあったとされ、科警研も論文でこれを認めており、4年以降はこの器具を使用していない。
足利事件当時のDNA型鑑定が、証拠として絶対視できるレベルになかったことが浮き彫りになったことで、導入初期のDNA型鑑定を有力な証拠として判決が下された別の事件で今後、再審請求が出されることも考えられる。
専門家によると、今回のように体液を使ったDNA型鑑定では、仮に第三者が体液に触れたとしても、鑑定結果に誤りが生じる可能性はほとんどないという。
また弁護人が推薦した鑑定医は、当時と同じ鑑定法でもDNA型を「不一致」としたことから、精度よりも器具の不備が問題だった可能性が指摘されている。
科学技術は日々進歩するため、どの段階で証拠採用するか、またどの程度まで証拠として評価するかは、ケース・バイ・ケースであり、困難な問題ではある。また、当時と現在とではDNA型鑑定の精度も器具も全く異なるため、今回の結果は現在の鑑定のあり方を揺るがすものではない。
ただ、確立されていない科学鑑定を“絶対的証拠”として扱ってきた警察当局や検察当局、裁判所の認識や姿勢に問題がなかったのか、検証する必要がある。また再審請求を待たず、検察当局として自ら、DNA型を再鑑定する必要がある事件を精査すべきだろう。
(大泉晋之助)