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【主張】下山判事罷免 裁判員制度を危うくする
部下の女性にしつこくメールを送っていた宇都宮地裁の下山芳晴判事が、国会の弾劾裁判で罷免を言い渡された。国民の司法への信頼を著しく失墜させた行為だ。当然の結果といえよう。
一裁判官の不祥事と軽視できない犯罪である。とりわけ、国民が刑事裁判に参加する「裁判員制度」が来年5月に迫っているだけに、その影響は甚大だ。“法の番人”である裁判官が自ら法律を犯していた。裁判所は制度の存立そのものを危うくするものと受け止めるべきである。
下山判事は今年2〜3月、甲府地・家裁の女性職員の携帯電話に計16回にわたり、性的表現を含むメールを送信した。同地裁はストーカー規制法違反で有罪判決を言い渡し、刑が確定している。同判事は罷免で法曹資格を失った。
裁判官は憲法で手厚く身分が保障されており、刑が確定しても国会の弾劾裁判所の審理を経ないと辞めさせられない。弾劾裁判所は衆参両院議員7人ずつ計14人で構成され、3分の2以上の賛成で罷免できる。
裁判長は「裁判官としての良心や品位はみじんも感じられない」と厳しく非難した。
注目したいのは、判決理由で裁判員制度に触れ、「制度導入を控え、国民に大きな衝撃を与え、司法への信頼は揺らいだ」と指摘したことだ。今回の事件は、まさにこの指摘に尽きよう。
弾劾裁判で裁判官が罷免されるのは7年ぶりで、昭和22年の制度開始から6人目である。過去には東京高裁判事が少女に現金を渡してわいせつな行為をして弾劾された。ロッキード事件に絡み、京都地裁の判事補が検事総長を名乗って時の首相に偽電話をかけるなど、信じられないような事件も起こしている。
裁判官だけではない。今月になって京都家裁の書記官が、振り込め詐欺で凍結された銀行口座から現金を引き出すなどして逮捕された。法律の知識を逆手にとった悪質極まりない犯罪である。
最高裁は裁判員制度に向け、しきりに国民の協力を求めている。しかし、このような不祥事が重なれば国民の信頼は遠のくばかりではないか。
裁判員裁判では、裁判官は裁判員を的確にリードし、判決に持っていくという重責を担っている。このことを改めて肝に銘じてもらいたい。